著者
柳澤 孝彰 見明 康雄 藥師寺 仁
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.680-687, 2003-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究は,実験的初期齲蝕エナメル質病巣に及ぼす市販のフノリ抽出物(主成分フノラン)と第二リン酸カルシウムを配合したキシリトールガムおよびリン酸化オリゴ糖カルシウムを配合したキシリトールガムの再石灰化促進効果を検討するとともに,それらの比較評価を目的としたものである.実験的初期齲蝕エナメル質病巣は,ヒト抜去第三大臼歯のエナメル質を酢酸緩衝液(pH4.0)で50℃,2日間脱灰することにより作製した.本試験は,それぞれのガム抽出液を含む再石灰化液に脱灰したエナメル質を37℃,2週間浸漬して行った.その後,浸漬したエナメル質を脱水し,ポリエステル樹脂に包埋,厚さ100μmの研磨切片を作製した後,軟エックス線発生装置でコンタクトマイクロラジオグラムを撮影し,鏡検した.また,再石灰化の程度は,画像処理解析を行うことにより算出した.さらに,それぞれのガムでの再石灰化の程度はstudent'st-testによる統計処理を行って,有意差を検定した.フノリ抽出物と第二リン酸カルシウムを配合したキシリトールガムは,初期齲蝕エナメル質病巣の全層にわたって再石灰化を高めており,再石灰化率は45.5%であった.これに対し,リン酸化オリゴ糖カルシウムを配合したキシリトールガムでは,再石灰化がほとんど認められず,再石灰化率も23.7%であった.フノリ抽出物と第二リン酸カルシウムを配合したキシリトールガムの再石灰化率は,リン酸化オリゴ糖カルシウムを配合したキシリトールガムの約1.9倍であった(P<0.01).