著者
柳澤 賢一 小山 泰弘
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.582, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

硫黄を有効成分とした塗布型忌避剤をスギやヒノキの成木の根元付近に塗布することにより、ツキノワグマによる剥皮害本数が有意に低減することが確認されている。しかし、豪雪地帯で根曲がり木が多く、剥皮害が激害化している栄村秋山の試験地においては、根曲がり部を足掛かりにして立ち上がったクマが、忌避剤を塗布していない高さで剥皮していた。そこで本試験では、忌避剤を根元だけではなく、地上高1m程度の高さにも点状塗布することで、クマの剥皮害をより効果的に防除できるかを検証した。忌避剤を塗布しない無処理区、根元のみに塗布した区、根元と地上1m程度の山側樹幹部に塗布した区を単木ごとランダムに設け、塗布から約5か月後の2022年10月上旬に被害調査を行った結果、被害率はそれぞれ21.8%、4.1%、1.4%となり、根元と山側樹幹部に忌避剤を塗布することで被害が有意に低下した。また、試験地内に設置した自動撮影カメラの画像を解析した結果、2021年と比較してクマの出没頻度が少なくなった。本剤を適切な方法で処理することにより、クマの剥皮害を有効に防除するとともに出没を抑えられる可能性があった。