著者
甘粕 瑞季 下出 昭彦 古川 康二 芦部 文一朗 松見 繁
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.655, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

クロモジ(Lindera umbellata Thunb.)はクスノキ科の落葉低木で、日本固有種の香木として知られており、枝から採れる精油はリラックス作用や抗菌作用があり、アロマテラピーなどにも活用されている。クロモジ精油の主成分はリナロールであるが、その組成は産地によって大きく異なることが知られている。今回、組成の異なるクロモジ精油について6種の細菌に対する抗菌活性を測定し、比較した。産地の異なるクロモジの枝から水蒸気蒸留によって精油を得、ジンジバリス菌、ミュータンス菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、大腸菌及びモラクセラ菌に対し最小発育阻止濃度試験又はハロー試験により抗菌作用を評価した。その結果、大腸菌を除く5種の菌に対してクロモジ精油が抗菌作用を示した。更に、ミュータンス菌及び黄色ブドウ球菌に対してはリナロール含量の高いクロモジ精油の方がより強い抗菌活性を示した。以上より、クロモジ精油は幅広い抗菌活性を有し、成分の組成の違いによりその抗菌活性は異なると考えられた。
著者
高取 千佳 謝 知秋 森山 雅雄 三宅 良尚 香坂 玲
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.34, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

国内の中山間地域では、人口減少・農業従事者の高齢化に伴い、耕作放棄される農地が増加し、獣害や生物多様性の低下などの環境面、景観面への悪影響が課題となっている。将来の農地の活用方針を定める上では、現状の耕作放棄地の分布状況の把握方法の定量化、およびその立地条件の把握が不可欠である。そこで、本研究では、三重県松阪市櫛田川流域を中心に、農地の生産、耕作放棄地の分布状況調査及び立地条件の把握、リモートセンシングデータの活用による自動化についての検討を行った。第一に、農地の管理労働量について統計資料の調査、農林業の管理者の把握およびヒアリング調査を基に、農地単位面積当たりの労働力・コストの算出、耕作放棄地の把握を行った。第二に、Sentinel-2のリモートセンシングデータを基に、合成開口レーダ及び光学センサの年間の変化量を分析し、耕作放棄されている箇所の自動的な把握を行い、ヒアリングによって得られた管理労働量および耕作放棄地との比較分析を行った。第三に、以上のデータに対し、平野部から中山間部に至る農地の管理労働量に、立地条件(地形・水系・集落や道路からの距離等)が与える影響について明らかとした。
著者
柳澤 賢一 小山 泰弘
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.582, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

硫黄を有効成分とした塗布型忌避剤をスギやヒノキの成木の根元付近に塗布することにより、ツキノワグマによる剥皮害本数が有意に低減することが確認されている。しかし、豪雪地帯で根曲がり木が多く、剥皮害が激害化している栄村秋山の試験地においては、根曲がり部を足掛かりにして立ち上がったクマが、忌避剤を塗布していない高さで剥皮していた。そこで本試験では、忌避剤を根元だけではなく、地上高1m程度の高さにも点状塗布することで、クマの剥皮害をより効果的に防除できるかを検証した。忌避剤を塗布しない無処理区、根元のみに塗布した区、根元と地上1m程度の山側樹幹部に塗布した区を単木ごとランダムに設け、塗布から約5か月後の2022年10月上旬に被害調査を行った結果、被害率はそれぞれ21.8%、4.1%、1.4%となり、根元と山側樹幹部に忌避剤を塗布することで被害が有意に低下した。また、試験地内に設置した自動撮影カメラの画像を解析した結果、2021年と比較してクマの出没頻度が少なくなった。本剤を適切な方法で処理することにより、クマの剥皮害を有効に防除するとともに出没を抑えられる可能性があった。
著者
小林 慧人 久本 洋子 福島 慶太郎 鈴木 重雄 河合 洋人 小林 剛
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.461, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

タケ類(イネ科タケ亜科)の生活史において有性繁殖は極めて稀なイベントであり、開花周期や開花習性や更新様式に関する知見は未だ限られる。一方、2010年代から現在にかけて、およそ120年周期とみなされるマダケ属ハチクの大規模開花が生じており、その実態解明の好機を迎えている。予測困難なタケ類の有性繁殖の機会を広域に把握するためには、研究者のみならず多くの市民の協力を得た記録や情報共有が有効な手段の一つになると考えられる。ハチクだけでなくさまざまなタケ種にかかわる有用な情報を蓄積するため、発表者らは Google MapやGoogle Formなどを活用し、市民参加による情報の収集・共有システムを試行した。研究者による現地観察、メディアの報道、SNSや各種アプリに挙げられた記載などに基づいて開花にかかわる情報を2019年から収集した。その結果、現段階で西日本を主とする日本各地から1400件に及ぶ情報を得た。情報の約9割はハチク類の開花であり、タケ類の有性繁殖の理解の基礎をなす情報も含まれた。本発表では、成果の報告にとどまらず、市民の協力によって得られる情報の学術的な活用のあり方や、今後の展望についても議論する。