著者
廣瀬 紗弓 戸松 薫 柳瀬 笑子
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 55 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP-19, 2013 (Released:2018-03-09)

1.序論茶(Camellia sinensis)は全世界で愛飲されている飲み物であり、近年の健康志向の高まりとともにその生理的機能が注目されている。カテキン類は茶葉に多く含まれるポリフェノール化合物であり、抗酸化作用、抗がん作用などの様々な生理的機能が見出されている。茶葉中のカテキン類は、紅茶やウーロン茶の製造過程の発酵により酸化、重合し、特徴的なtheaflavinやtheasinensin、oolongtheaninとなることが知られている(Fig.1)。これらにもカテキン類と同等、もしくはそれ以上の生理的機能が期待されているが、含量は非常に少なく分離精製も困難であるが故にその詳細な研究は難しく、また高収率な有機化学的合成法も確立されていない。そこで本研究では、カテキン類の酸化縮合反応の解明を目的として、反応部であるカテキンB環部のモデル化合物を用い、酸化反応について検討した。また、galloyloolongtheanin (1)の合成を目的とし、(-)-EGCg (2)の酸化反応についても検討した。Fig.1 カテキン二量体2.カテキンB環部のモデル化合物を用いた酸化反応 酸化剤としてフェチゾン試薬(炭酸銀-セライト)を用い、5位置換ピロガロール (3)と4位置換カテコール (4)を酸化しtheaflavin類のモデルであるベンゾトロポロン類縁体 (5)を合成した。様々な置換基を持つB環部モデル化合物で反応を行ったところ、5の収率は置換基の種類によって著しく変化した。その原因として、置換基の立体障害や電子供与性が影響している可能性が示唆された。そこで、さらに様々な置換基をもつ3と4を用いて合成を検討したところ、置換基の立体障害による反応性の低下が原因であることが分かった。さらに、5の収率が低い場合において副生成物が確認された。各種機器分析及び誘導化反応の結果、2分子の3が酸化的に縮合した化合物6が生成していることが判明し、6はさらに水と反応してより安定な化合物7となることが分かった。これらの結果から、5の収率低下の原因は、置換基の立体障害による3、4間の反応性の低下による副生成物の生成であることが示唆された(Fig.2)。カテキン類の酸化剤としてはPd/C 1)やK3[Fe(CN)6]2,3)等が知られており、theasinensin A (8)は2をCuCl2で酸化し、アスコルビン酸で還元することで得られることが報告されている4)。そこで、3を同条件で反応させたが、8を部分構造にもつ化合物は得ることができず、6が高収率で得られた。他の酸化剤としてK3[Fe(CN)6]やNaIO3を用いた場合でも同様であり、このことから、3の酸化では実際のカテキン類とは異なる位置選択性を示すことが明らかとなった。Fig.2 カテキンB環部モデル化合物の酸化反応3.(-)-EGCgの酸化反応 1の生成機構を解明するために、2の酸化反応の検討を行った。酸化剤としてPd/CやK3[Fe(CN)6]を用いた場合、8及び9が得られた。CuCl2を用いた場合では、9は得られず、アスコルビン酸で還元することで8が得られた。8が1の生成中間体であると推定しさ(View PDFfor the rest of the abstract.)