著者
松浦 正憲 齊藤 菜穂子 中村 純二
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP11, 2015 (Released:2018-10-01)

1.背景 幾つかの種類のヤドカリは、神奈川県三浦市や三重県志摩市周辺等の一部の地域で刺身や味噌汁として食されている。不思議なことに、ヤドカリの中でもオニヤドカリ(Aniculus miyakei)摂食後、水を飲むと甘味が誘導される現象が知られている。このように水を甘く感じる作用から、オニヤドカリは「あまがに」とも呼ばれている。この現象を引き起こす甘味誘導物質については、水や有機溶媒に可溶な低分子化合物であることが報告されていたが、詳細は未解明であった1)。そこで、この特異な味覚修飾作用に着目し、甘味誘導成分の解明を目的として研究に着手した2)。2.甘味誘導成分の同定 実験材料として三重県伊勢市にて採取したオニヤドカリを用いた。まず、ヤドカリを身と内臓部分に分けて、水飲用時の甘味誘導を検討したところ、内臓部分(中腸腺)に甘味誘導作用があることが確認できた。摂取直後はほとんど味を感じないが、10秒ほどして徐々に弱い甘味を感じるようになり、水を飲用すると甘味が明確に誘導される。そこで、この水飲用時の甘味誘導作用を指標に、関与成分の探索を行った。凍結乾燥した内臓部分をクロロホルム/メタノールで抽出後、ヘキサンと90%メタノールで分配した。続いて、90%メタノール層をブタノールと水にて再分配し、ブタノール層を得た。得られたブタノール層を、逆相クロマトグラフィーによる精製を繰り返すことで、甘味誘導画分を得た。得られた甘味誘導画分は、クロマトグラム上では複数のピークを示すものの、NMRスペクトル上では、ほぼ単一成分であったため、各種NMRスペクトル解析により、この画分の主成分はオクテニル硫酸エステル(1)であると決定した(Figure 1)。そこで別途合成品を調製し(Scheme 1)、スペクトルを比較したところ、良い一致を示し(Figure 2)、さらに官能評価の結果、甘味誘導画分と同様の水飲用による甘味誘導作用が確認できたことから、オニヤドカリ由来の甘味誘導成分は1であると決定した。なお1は新規化合物であった。 続いて、オニヤドカリ中の1の含有量を調べた。オニヤドカリの内臓部分の抽出液をLC-MS/MS MRMモードにて定量分析したところ、乾燥内臓部分1 gあたり(約1個体分)、50mg以上の1を含有していることがわかった。1はおおよそ数mgの摂取で水飲用時に甘味が誘導されるため、オニヤドカリ中には甘味誘導に十分な1が含まれていることがわかった。また、比較対象として甘味誘導作用を示さない別種のヤドカリ(未同定)についても、その含有量を調べたところ、1が若干量含まれているものの、オニヤドカリと比較してその含有量は1/10程度であった(Figure 3)。この結果から、オニヤドカリ特有の甘味誘導現象は、1の含有量の差が原因であると考えられた。 (View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
工藤 雄大 千葉 親文 長 由扶子 此木 敬一 山下 まり
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP63, 2015 (Released:2018-10-01)

[背景・目的] テトロドトキシン (tetrodotoxin, TTX, 1) は、電位依存性ナトリウムチャネルを強力かつ選択的に阻害する神経毒であり、致死性の食中毒を引き起こす。TTXはフグ、巻貝、カニなどの海洋生物、および陸棲の両生類であるイモリやカエルに含まれ、世界中に分布する。この特異な構造が自然界でどのように構築されるかは予測が困難であり、TTXの生合成経路は未だ解明されていない。既に我々も含めた複数の研究グループが海洋由来のバクテリアによるTTXの生産を報告しており1)、TTXは食物連鎖により海洋生物へと蓄積されると考えている。一方、陸上におけるTTXの生産生物は未同定である。唯一のラベル化合物の投与実験として、清水らによるイモリへのarginine, acetate等の投与例があるがTTXはラベル化されず2)、遺伝子解析からTTXの生合成経路に言及した研究もこれまでない。そこで我々は、TTX類縁体の化学構造が生合成経路を反映していると考え、新規TTX類縁体(生合成中間体)を得るために質量分析器を駆使した網羅的な探索を実施してきた3)。そして最近、有毒のオキナワシリケンイモリ (Cynops ensicauda popei) から、TTXのC5-C10が直接炭素-炭素結合した10-hemiketal-typeの類縁体の4,9-anhydro-10-hemiketal-5-deoxyTTX (2) を発見した。化合物2は国内外の複数の有毒イモリに共通して存在していたため生合成中間体であると考え、2の特徴的な骨格構造からモノテルペンを出発物とする新たな生合成経路の可能性を考えた (Fig. 1)4)。本研究では、推定した経路を基に更なる生合成中間体を探索したので報告する。また未解明であるイモリにおけるTTXの起源を追及した。Figure 1. Proposed biosynthetic pathway towards TTX based on the structure of 2.4) 1. 新規環状グアニジン化合物群とTTX生合成経路の考察 質量分析器を用いて推定した生合成経路における中間体を探索した。これまで我々は水溶性の高いTTX類縁体の探索法として、希酢酸加熱抽出、活性炭による前処理、HILIC-LC-MS/MS3c, 5)による解析を行ってきた。しかし、本研究のターゲットとなる生合成中間体はTTX類縁体よりも親水性が低いことが予想されたので、探索のステップをそれぞれメタノール抽出、ODSによる前処理、逆相カラムによるLC-MSへと変更し、より初期の生合成中間体に焦点を当てた探索法を新たに構築した。この疎水性化合物用の探索法と従来の親水性化合物用の探索法の二つの方法で予想生合成中間体の発見を目指した。1-1. Cep-210, Cep-212の構造解析疎水性化合物の探索では、C. e. popeiのメタノール抽出物から[M+H]+ m/z 210.1606 (C11H20N3O, err. 2.2 ppm, ESI-TOF-MS) の微量新規成分 (Cep-210, 3) を検出した。その分子式から、化合物3は予想生合成中間体に相当する可能性が考えられたため、大量抽出および単離・構造決定を試みた。化合物3をC. e. popeiの身体組織 (415 g、約70匹) からメタノールで抽出して分配操作を行った後、数種の逆相カラムと弱酸性陽イオン交換カラムを用いて単離した。得られた3(69 nmol、マレイン酸を内部標準として1H NMRの積分値より算出)をCD(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
福山 圭 大類 洋 桑原 重文
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2015

<p>【緒言】</p><p> 後天性免疫不全症候群 (AIDS) は世界的に問題となっているHIV(レトロウイルス)感染症である。現在,作用機序の異なる薬剤を併用する多剤併用療法(HAART) が行われており飛躍的な予後の改善が図られている。しかし生涯にわたる多剤併用療法は予期せぬ副作用の発現と多剤耐性ウイルスの出現という新たな問題に直面しており,新薬の創出と供給は創薬化学およびプロセス化学上,喫緊の研究課題である。</p><p> 近年4'-C-置換ヌクレオシドの特異な生物活性に注目が集まっている。4′-ethynyl-2-fluoro-2′-deoxyadeno- sine (EFdA, 1)は大類,満屋,ヤマサ醤油(株)の共同研究により創出された逆転写酵素阻害剤である (Figure 1)<sup>1)</sup>。近年,ヤマサ醤油(株)からメルク社(米国)へのライセンス供与が行われ,抗エイズ薬としての実用化研究が進められている。同様の作用機序を持つ代表的処方薬であるアジドチミジン(AZT, ジドブジン, EC<sub>50</sub> = 22 nM, HIV-1<sub>NL4-3</sub>)等に比べ数百倍から数万倍という桁違いに強力なHIV複製阻害作用(EC<sub>50</sub>= 50 pM)を有することに加え,急性毒性を示さない(LD<sub>50</sub><sub> </sub>>100 mg/kg,マウス,p.o.),様々な耐性ウイルスに対しても有効である,長い血中半減期 (t<sub>1/2</sub>= 17.2 h) を持つ等の優れた特性から,極めて有望な抗エイズ薬候補と考えられている<sup>2)</sup>(Proc. Jpn. Acad., Ser. B 2011, 87, 53)。</p><p> 一方,本化合物の臨床開発における最大のネックは1の供給体制が十分でない点にある。既存の2つの合成法(大類法<sup>1)</sup>,桑原法<sup>3)</sup>)が知られているものの(Figure 2),原料価格,収率,立体選択性の点で問題を残していた。この様な背景の下,我々は真に実用的なEFdA合成法の開発に着手した。</p><p>【フラノース4位の新規増炭法の開発】</p><p> フラノース誘導体の4位を増炭する方法としては,安価で大量に入手可能なdiacetone-D-glucose (2)から5工程で得られるアルデヒド3をaldol/ Cannizzaro反応により4-ヒドロキシメチル化して4を得るMoffattらの方法<sup>4)</sup>が唯一の報告例であるが,生成する2つの水酸基の選択的保護に問題があった(Scheme 1)。</p><p> 我々は,3-ケトフラノース誘導体6とホルムアルデヒドとのアルドール反応について検討した結果,K<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>やEt<sub>3</sub>Nを塩基として用いると4位の立体化学の反転を伴って,アルドール反応生成物 7とそれがホルムアルデヒドと過剰反応を起こした8の混合物が定量的に得られることを見出した(Scheme 2, Table 1)。</p><p><sup></sup></p><p> 8は報告例の少ないアセタール/ヘミアセタール連続構造を持つ新規糖誘導体であり,還元処理により7とともにアルコール9へ立体選択的に変換できた(アルドール反応完結後,濾過により塩基を除去し,濾液に水とNaBH<sub>4</sub>を加えることで簡便に四置換の4位炭素を持つ9を得る手法を確立した;白色結晶,100 g スケール,2から3工程,通算収率93%)。9の3位,5位および5'/6'位は選択的な修飾が可能であり,自由度の高い新規な四置換炭素含有合成ユニットになり得るものと考えている。</p><p>【水酸基</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
福山 圭 大類 洋 桑原 重文
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP30, 2015 (Released:2018-10-01)

【緒言】 後天性免疫不全症候群 (AIDS) は世界的に問題となっているHIV(レトロウイルス)感染症である。現在,作用機序の異なる薬剤を併用する多剤併用療法(HAART) が行われており飛躍的な予後の改善が図られている。しかし生涯にわたる多剤併用療法は予期せぬ副作用の発現と多剤耐性ウイルスの出現という新たな問題に直面しており,新薬の創出と供給は創薬化学およびプロセス化学上,喫緊の研究課題である。 近年4’-C-置換ヌクレオシドの特異な生物活性に注目が集まっている。4′-ethynyl-2-fluoro-2′-deoxyadeno- sine (EFdA, 1)は大類,満屋,ヤマサ醤油(株)の共同研究により創出された逆転写酵素阻害剤である (Figure 1)1)。近年,ヤマサ醤油(株)からメルク社(米国)へのライセンス供与が行われ,抗エイズ薬としての実用化研究が進められている。同様の作用機序を持つ代表的処方薬であるアジドチミジン(AZT, ジドブジン, EC50 = 22 nM, HIV-1NL4-3)等に比べ数百倍から数万倍という桁違いに強力なHIV複製阻害作用(EC50= 50 pM)を有することに加え,急性毒性を示さない(LD50 >100 mg/kg,マウス,p.o.),様々な耐性ウイルスに対しても有効である,長い血中半減期 (t1/2= 17.2 h) を持つ等の優れた特性から,極めて有望な抗エイズ薬候補と考えられている2)(Proc. Jpn. Acad., Ser. B 2011, 87, 53)。 一方,本化合物の臨床開発における最大のネックは1の供給体制が十分でない点にある。既存の2つの合成法(大類法1),桑原法3))が知られているものの(Figure 2),原料価格,収率,立体選択性の点で問題を残していた。この様な背景の下,我々は真に実用的なEFdA合成法の開発に着手した。【フラノース4位の新規増炭法の開発】 フラノース誘導体の4位を増炭する方法としては,安価で大量に入手可能なdiacetone-D-glucose (2)から5工程で得られるアルデヒド3をaldol/ Cannizzaro反応により4-ヒドロキシメチル化して4を得るMoffattらの方法4)が唯一の報告例であるが,生成する2つの水酸基の選択的保護に問題があった(Scheme 1)。 我々は,3-ケトフラノース誘導体6とホルムアルデヒドとのアルドール反応について検討した結果,K2CO3やEt3Nを塩基として用いると4位の立体化学の反転を伴って,アルドール反応生成物 7とそれがホルムアルデヒドと過剰反応を起こした8の混合物が定量的に得られることを見出した(Scheme 2, Table 1)。 8は報告例の少ないアセタール/ヘミアセタール連続構造を持つ新規糖誘導体であり,還元処理により7とともにアルコール9へ立体選択的に変換できた(アルドール反応完結後,濾過により塩基を除去し,濾液に水とNaBH4を加えることで簡便に四置換の4位炭素を持つ9を得る手法を確立した;白色結晶,100 g スケール,2から3工程,通算収率93%)。9の3位,5位および5’/6’位は選択的な修飾が可能であり,自由度の高い新規な四置換炭素含有合成ユニットになり得るものと考えている。【水酸基(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
小菅 卓夫 横田 正実
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.211-217, 1974

As a cardiac principle of aconite root, Yokonoside had been reported by us in previous meeting, but synthesized Yokonoside did not have any biological activities. Then, separating procedure had been reinvestigated to obtain the true cardiac principle. In order to remove the inactive glycoside, the fractn. III was subjected to counter current distribution of n-buthanol-0.1N-HCl solvent system. And a crystalline matter (mp.260°), was obtained as colorless plate from the active fractn. IV as HCl-salt. The principle stimulates flog's heart even in ten billionth dilution, thus it was designated as Higenamine. Higenamine was identified as dl-demethyl coclaurine [V] from the spectral data and in comparison with synthesized authentic sample.
著者
海原 浩辰 林 尚毅 横島 聡 藤間 達哉 井上 将行 福山 透
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 第59回天然有機化合物討論会実行委員会 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.163-168, 2017 (Released:2020-09-20)

Asymmetric total synthesis of (–)-morphine (1) has been accomplished in 18 steps from commercially available 7-methoxy-2-tetralone (7). Our synthesis features a simple transformation from the readily available chiral intermediate (3), reported earlier by d’Angelo and co-workers. Introduction of the requisite oxygen functionality to the 8-position of the tetralone could be achieved by Friedel-Crafts acylation and ensuing Baeyer-Villiger oxidation. Upon treatment of dienol 15 with acid at 0 °C, a facile cyclization proceeded to form the E-ring (16). The diene thus formed was later converted to γ-hydroxy-α,β-unsaturated ketone 20 by means of photooxygenation and triethylamine. Dehydration of 20 was effected by triflic anhydride and subsequent removal of 2,4-dinitrobenzenesulfonyl group generated a mixture of neopinone (21) and codeinone (22). Conversion of the mixture to (–)-morphine was performed by following the known procedures.
著者
小原 平太郎 小野寺 準一 阿部 敏
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.380-385, 1975

In the previous papers, we have reported that the conventional structures of carthamin, presented by Kuroda and Seshadri, should be reexamined from the comparison of its properties with those of their synthetic analogs. The IR, UV, PMR, and ^<13>C-NMR spectral data and the chemical evidences suggested that carthamin is humulone-like C-glycosyl compound, having two p-hydroxycinnamoyl groups and one unsaturated methine group. On the bases of these results and the comparison of the spectral data with those of some synthetic analogs, we will propose a new structure (11) for carthamin.
著者
犀川 陽子 岡本 博樹 乾 泰地 橋本 貴美子 中田 雅也 真壁 みどり 奥野 智旦 須田 隆
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.43, pp.443-448, 2001

A poisonous mushroom Podostoma cormu-damae caused two lethal poisoning in Japan in 1999 and 2000. Some of the following symptoms are observed in these poisonings: gastrointestinal disorder, erroneous perception, decrease in the number of leukocytes and thrombocytes, deciduous skin of face, loss of hair, and atrophy of the cerebellum which brings about a speech impediment and voluntary movement problems. We studied the toxic constituents of its culture broth and the fruit bodies using lethal effect on mice as an index. The extracts from the culture filtrate and the fruit bodies were injected into the abdominal cavity of a mouse. The lethal effect was observed in both extracts from the culture filtrate and the fruit bodies. The organic extracts of the culture filtrate were chromatographed on silica gel to give the major compounds 1, 2, and 3. The ^1H and ^<13>C NMR spectroscopic analyses revealed that these compounds 1〜3 are members of the macrocyclic trichothecene group. Comparison of the spectral data of 1〜3 with those in the literature revealed that 1 is roridin E, 2 is verrucarin J (muconomycin B), and 3 is satratoxin H. On the other hand, the fruit bodies were extracted with water and methanol. The water extracts were chromatographed on ODS to give satratoxin H (3), and the methanol extracts were chromatographed on silica gel to give 4〜6. The NMR and MS analyses showed that 4, 5, and 6 is the 12',13'-diacetate, 12'-acetate, and 13'-acetate of satratoxin H (3), respectively. The 4〜6 are new compounds that occur in nature. All these macrocyclic trichothecenes except for 2 had a lethal effect on mice by at least 0.5 mg per capita.
著者
小林 正治 玉乃井 英嗣 井上 智晴 益山 新樹
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 55 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP-13, 2013 (Released:2018-03-09)

1. はじめに 食用キノコであるヤマブシタケには,アルツハイマー型老年期認知症の中核・周辺症状を改善する効果があることが臨床試験によって認められており[1],最近では,生もの,乾燥体,粉末,錠剤などの様々な形体で健康食品として販売されている。ヤマブシタケの機能性を司る因子の一つとして,子実体に含まれるヘリセノン類の関与が指摘されている。ヘリセノン類は1991年に発見された天然由来としては初の神経成長因子(NGF)合成促進物質であり,間接的にニューロンの分化・成熟・機能維持を助けることにより脳の老化を予防すると考えられている[2]。ヘリセノン類には多数の同族体が存在し,NGF合成促進活性だけでなく血小板凝集抑制活性[3]や小胞体ストレスによる細胞死の抑制活性[4]などの多彩な生物活性が知られている。しかしながら,これらの生物活性は個別の化合物に対して局所的に調べられたものであり,多様な構造を持つヘリセノン類の包括的な構造活性相関については明らかにされていない。活性試験についても,天然物サンプルの量的供給が隘路となり,in vivoでの毒性試験や薬物動態試験まで十分に検討されていない。以上の背景を踏まえ,本研究では,多様な構造を持つヘリセノン類の体系的な構造活性相関と創薬・治療学的応用を目指し,全合成研究を行った。2. 合成計画 ヘリセノン類は大別して,側鎖の5’位が酸化されているものと酸化されていない図1.ヘリセノン関連天然物の体系的全合成戦略(☆は本研究で合成完了した化合物)ものに分けられ,芳香環右辺や左辺側鎖の構造の違いによって系統化できる(図1)。私たちは,側鎖とコアのカップリングによって生成するフタリド1を共通中間体として,非天然型の誘導体も含めて網羅的に合成するルートを計画した。3. コア部の短段階合成[5] ヘリセノン類を効率的に合成するために重要となるのは,多様な官能基を直截的かつ位置選択的に導入することである。私たちは,不飽和エステル3とアセト酢酸エチルのMichael-Claisen反応によりジケトン5を合成し,臭化銅(II)によるワンポット多官能基化反応を経てコア部6を直截的に合成した(図2)。5→6の多官能基化反応では,酸性度の高いジケトンのα位が選択的に臭素化された後 (中間体i),メタノールの付加,HBrの脱離,芳香環化,ラクトン化が連続的に起こり所望のフタリドが生成したと考えられる。以上のように,市販のカルボン酸2から4工程でコア部を合成するルートを見出した5。図2.コア部の短段階合成4. ヘリセノンJおよびヘリセンA-Cの全合成5 続いて,側鎖とのカップリングを検討した。7aは2つのオルト位に電子供与性置換基を持つ反応性の低いアリールブロミドであったが,条件の最適化を行った結果,CsF存在下,(Ph3P)2PdCl2を触媒として80~85 °Cでカップリングを行うことで,目的の1bが単離収率60-87%で生成した(図3)。なお,本過程では7aから誘導したアリール銅試薬のゲラニルブロミドに対する置換反応も検討した(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
清田 洋正 五十嵐 渉 齋藤 亜紀 古川 博之 星川 浩輝 桑原 重文
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2015

<p> Enacyloxin (ENX)類(Fig. 1)は、赤パンカビNeurospora crassaの培養上清で培養した酢酸菌の一種Frateuria sp. W-315株の生産する、珍しい鎖状ポリエン-ポリオール型の抗生物質である[1]。そのポリエン構造のため光に不安定であり、渡邉敏彦博士による発見報告以来、当研究室での全立体構造決定まで25年を要した[2]。中でもENX IIa (2) は抗グラム陽性・陰性細菌活性を示し、その作用機構はリボソームelongation factor-Tuに作用するタンパク質合成阻害によることが知られている[3]。酵母やカビには抗菌活性を示さないことからも選択的な抗菌剤としての開発が期待される。ENX IIaの他、ENX oxidaseによる酸化の前駆体であるENX IVa (1) やdecarbamoyl ENX IIa など様々な類縁体が単離されている。</p><p>Fig. 1. エナシロキシン (ENX) 類の構造と逆合成解析</p><p> 我々はENX類の創薬への展開を目指して全合成研究を行っている[4]。ENX IIa (2) の逆合成解析をFig. 1に示す。全体をポリオールC16'-C23'部A、C9'-C15'部B、 ポリエンC1'-C8'部C及びシクロヘキサンカルボン酸部Dに分けた。Aの3箇所の不斉点についてはd-アラビノースを利用し、Bはd-グリセルアルデヒド=アセトニドからクロチルホウ素化で導くことにした。ポリエン部C はWittig反応で調製し、シクロヘキサンカルボン酸部Dについては、d-キナ酸の立体化学と位置選択的なアシル化反応を利用する。AとBの連結では、ジアニオン型求核試薬と酸クロリドとのカップリング反応を計画した。BCD間についてはHorner-Wadsworth-Emmons反応を用いることにした。</p><p>1)ポリオールC16'-C23'部の合成(Scheme 1)</p><p> d-アラビノースをラクトン誘導体3に導き、Wittig-Horner反応により4を経てE-アルケニル部分を増炭した5を得た。4のカルボニル基の還元は非選択的であったが、塩基処理で生じたオレフィンはE-体のみであった。トシラート6を経てエポキシド7を調製後、C16'-C23'部となるスルホンA1を合成した[4b]。また、相当するブロミドA2、ホスホニウム塩A3も調製した。</p><p>Scheme 1. C16'-C23'部の合成</p><p>2)ポリオールC9'-C15'部の合成(Scheme 2)</p><p> d-グリセルアルデヒド=アセトニド9からクロチルホウ素により4炭素増炭してアルコール10を得、酸触媒を用いて1,2-アセトニド部分を2,3-位に掛け替えて11とした[5]。11から相当する酸クロリドB1を調製した。一方、11の二重結合をオゾン分解した後、LiCHCl<sub>2</sub>を用いて増炭[6]、アルキノール12及び酸クロリドB2に導いた。また、12のアルキン部分をRed-Al/NCSを用いて塩素化し、酸クロリドB3を得た。</p><p>Scheme 2. C9'-C15'部の合成</p><p>3)C9'-C15'部とC16'-C23'部のカップリング反応(Scheme 3)</p><p> 予備実験において、相当するスルホン(O-EE-A1)由来のモノアニオンでは、アルデヒド、酸クロリド何れともカップリング体は得られなかった。そこで求核性の向上を狙い、ヒドロキシスルホンA1からジアニオンを調製、酸クロリドB2を加えたところ、目的物A1-B2が10%の収率で得られた。一方、ホスホニウム塩A3を用いても目的物は得られなかった。更に求核性を向上させるため、共鳴安定化していないヒドロキシアルキ</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
横田 正 大嶽 徹朗 鈴木 里英 衛藤 英男 大嶋 俊二 稲熊 隆博 石黒 幸雄
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 45 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.449-454, 2003-09-01 (Released:2017-08-18)

Lycopene has aroused public interest owing to its role in preventing oxidative damage, cancer and aging, etc. These activities are considered to be due to its high ability of scavenging active oxygen species. In the present work, we have examined the products formed by the photosensitized oxygenation, hydrogen peroxide oxidation, m-chloroperbenzoic acid (mCPBA) oxidation and peroxinitrite oxidation of lycopene. We also isolated two oxygenated lycopenes with a novel five-membered ring end-group from tomato puree. In photosensitized oxygenation (singlet oxygen oxidation), we isolated apo-6'-lycopenal and 6-methyl-5-hepten-2-one. The reaction is supposed to proceed via 1,2 addition of singlet oxygen to 5,6 double bond of lycopene. In hydrogen peroxide and m CPBA oxidation, we isolated oxygenated lycopenes with a novel five-membered ring end-group (2,6-cyclolycopene-1,5-diol, 2,6-cyclolycopene-1,5-epoxide, 1,16-didehydro-2,6-cyclolycopene-5-ol and 1-methoxy-2,6-cyclolycopene-5-ol). It is proposed that the formation for these compounds occurs by rearrangement of lycopene 5,6-epoxide. In peroxinirite oxidation, we could classify the products into three types, 1) oxidative cleavage products, 2) non-cleavage oxidative products that have C40 carbon skeleton, and 3) Z-isomers of lycopene. The reaction pathways to form these compounds will be discussed.
著者
安元 健 伊藤 志保美 浮穴 学宗 ツインゴーネ アドリアーナ ロッシ ラケーレ ソプラノ ビットリオ
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2018-07-19

<p>腔腸動物スナギンチャク(Palythoa spp.)から発見されたパリトキシン(palytoxin,PLTx)と同族体は複雑な構造と強力な毒性を持つ<sup>1</sup>。演者ら(TY,TU))は底生渦鞭毛藻Ostreopsis siamensisから42-hydroxy-3,26-didemethyl-19,44-dideoxypalytoxinを単離決定し,最近,LC-QTOF を使用して伊計島産O. cf. ovata 中のovatoxin-a,-d,-e(IK2) の新規構造を推定した<sup>2,3</sup>。一方,Ciminielloらは地中海産Ostreopsis cf. ovata から単離したovatoxin-aの構造を42-hydroxy-17,44,64-trideoxypalytoxinと決定した<sup>4</sup>。本研究はLC-MSを用いてPLTx類縁体の高感度・迅速構造解析法を開発して化学構造と分布の多様性,生合成解明,安全性監視への端緒とすることを目的とした。</p><p>[方法] スペクトル測定はLC(ESI)-TOFMS(Agilent Technology)を用いて正・負両モードで行い,質量100~3000の範囲のイオンを抽出した。本文中のm/zは小数点以下を省略してある。LCは移動相に0.1%ギ酸/MeCNによる勾配法を用いた。PLTxは市販品を使用し,混在するpalytoxin carboxylic acid(PLTxCOOH)とpalytoxin amide (PLTx-NH<sub>2</sub>)も対象とした。渦鞭毛試料はナポリ湾産O. cf. ovata (AZ株)の培養藻体をMeOHで抽出して使用した。誤差の許容値は10ppmとした。</p><p>[パリトキシンの正イオンスペクトル] フラグメントイオンは生成機構に基づいて3型に分類された。第一は115-NH<sub>2</sub>に電荷を有し,チャージリモートフラグメンテーションで生じる(Fig.1)。C79-C81-triol周辺の開裂と脱水で生じるイオン(m/z744,726,708,804,798,768)はPLTx同族体に特徴的である<sup>2</sup>。m/z916とその脱水イオンは73-OHの存在を示し,天然同族体73-deoxypalytoxinとの区別に役立つ。F環の開裂で生じるイオン群は,70-deoxy の推定構造を持つovatoxin-a-IK2との区別に役立つ。その他の主要なC-C結合の開裂位置も図中に示す。結合が切断されて生じる最初のモノエンのイオンは観測されず,共役が進行してトリエン以上になって観測される。水酸基の位置が適切でなければ脱水による共役は進行せず,イオンの確実な同定を可能とする。第二のグループはC1に結合した末端構造(A1+A2)中のアミド窒素が正電荷を担うと推定され,C8'からC11に至る部分構造の情報を与える(Fig.2)。末端の3-aminopropanol(A1)が脱落したm/z740のイオンは,dioxabicyclononane環の存在と位置を示す唯一のイオンである。開裂箇所のC28-C29結合の近傍に水酸基が存在しないので,脱水による共役化が進行せず,イオン強度が低い。第三のグループは炭素結合が2か所で同時に開裂し,その後の脱水によって生じた共役ポリエンである(Fig.3, 4)。A環とD環周辺の開裂の組み合わせによって多様なイオンが生成し,水酸基の情報を与える。例えば炭素数39の共役ポリエンでは水酸基5個の脱離で生成する。C41-C46間の水酸基は4個だけなので脱水は13-OHから20-OHに向けて進行している。</p><p>[パリトキシンの負イオンスペクトル] 第一のグループはD環周辺の開裂によって生じ,C1に結合した末端アミド構造は保持されている。第二グループは115-NH<sub>2</sub>を有し,鎖長が長くて水酸基(酸素原子)の数が増加すると観測される。第三グループのフラグメントm/z947ではC1-アミドが開裂してアルドヒドを生成したと推定さ</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
亀谷 哲治 鈴木 幸夫 伴 千恵子 三沢 薫 高田 信子 叶田 清 本多 利雄
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, pp.63-70, 1987

Chiral cyclopentane derivatives have widely been employed as important starting materials in the syntheses of naturally occurring compounds. Development of an efficient preparation of a chiral cyclopentane derivative from readly available substances with both (+)- and (-)-forms is therefore desirable. We have established an efficient procedure for the preparation of chiral 2-isopropeny1-5-methyl-4-oxocyclo-pentane-1-carboxylate(1) and (2), whose substituents would be transformed into variety of functional groups, from readily avairable (-)- and (+)-carvone. First, the (-)-isomer(1) was employed in the synthesis of (+)-tecomanine (7), an antipodal form of hypoglycemic monoterpene alkaloid, where the aminylium ion-induced cyclization played an important role. Whereas, N-acetyl-L-acosamine (32), found as a structural component of glycosidic antibiotic, was also derived from the (+)-isomer (2) by utilizing the Beckmann rearrangement and Baeyer-Villiger oxidation as key reactions. Finally, Melillo's lactone(34), a key intermediate for the synthesis of carbapenem antibiotic (+)-thienamycin, was prepared from (-)-isomer(1) by manipulation of its substituents in reasonably high-yield.
著者
亀谷 哲治 津吹 政可 日暮 勝之 加藤 正 本多 利雄
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, pp.176-183, 1985

The stereocontrolled synthesis of steroid side chain has been developed. The major interest has been forcused on the synthesis of the side chain of ecdysone as well as crustecdysone from 20-oxosteroid via furan derivatives. Reduction of the olefin (21) over palladium-carbon afforded the (20S)-20-furylsteroid (22), stereoselectively, whose hydrogenation over rhodium-alumina, followed by ruthenium tetroxide oxidation and treatment with methylmagnesium bromide, gave the triols (28) and (29) having an ecdysone-type side chain, respectively. The stereoselective reduction of the lactone (33) as a key reaction to give the δ-lactone (35) and the γ-lactone (36), under various conditions has also been investigated. Grignard reaction of both lactones with methylmagnesium bromide led to the synthesis of the tetraol (37) possessing a crustecdysone side chain. The total synthesis of 2-deoxycrustecdysone (3) has also been achieved by application of the above method.
著者
村江 達士 露木 孝彦 西浜 忠明 増田 昭三 高橋 武美
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.13, pp.219-226, 1969

Three new bitter principles, nigakilactone A, B and C and a known bitter principle, quassin (nigakilactone D), were isolated from Picrasma ailanthoides Planchon (Japanese name: nigaki, Simaroubaceae). Nigakilactone A, B and C were shown to be closely related lactones in the following way. Methylation of nigakilactone A (I), C_<21>H_<30>O_6, m.p. 237.5-238°, with CH_3I-Ag_2O-DMF gave nigakilactone B (II), C_<22>H_<30>O_6, m.p. 278.5°, which was formed by alkaline hydrolysis of nigakilactone C (III), C_<24>H_<34>O_7, m.p. 252.5-253°. The latter compound (III) was obtained on acetylation of II with Ac_2O-pyridine. Nigakilactone A (I) afforded a monoacetate (IV) by acetylation with Ac_2O-pyridine. On oxidation with Na_2Cr_2O_7 in acetic acid, IV yielded a keto-acetate (V). Oxidation of I with CrO_3-pyridine gave an α-ketol (VI), which was oxidized with Bi_2O_3 to afford a diosphenol (VII). On methylation with dimethyl sulfate and alkali, VII gave a methylated diosphenol (VIII), which was shown to be identical with quassin (XI). From these findings, along with the PMR spectrum of I, the structure of nigakilactone A is established as I. PMDR experiment on III, afforded the evidence for the presence of a partial structure (C). These observations lead to the structure III for nigakilactone C and the structure II for nigakilactone B. Nigakilactone D was found to be identical with quassin.
著者
田中 正泰 針ヶ谷 弘子 鎌田 樹志 氏原 一哉 橋本 勝 橋本 貴美子 松田 冬彦 柳屋 光俊 白濱 晴久 奥野 智旦
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 34 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.110-117, 1992-09-10 (Released:2017-08-18)

Ohwaraitake is Japanese name of a poisonous mushroom Gymnopilus spectabilis and means "a loud laugh mushroom". Accidental ingestion of it causes hallucinosis and abnormal behavior. A hallucinogenic mushroom contains usually psilocybin or its analogues but it is reported that any psilocybin or its congenor does not found in Japanese Ohwaraitake. The toxic symptoms suggest that any neuroexcitatory substance must be contained. The isolation was carried out monitoring depolarizing activity on the new born rat spinal cord. 1. Chromatographical fractionation and bisassay showed that the neuroexcitatory active compounds were gimnopilins (G) which were known as bitter principles of this fungus. Further fractionation revealed that G (1) was inactive and activities of G (2) increased from n=7 to n=5 and besides, G (2), which was newly isolated this time, was more active than G (2). 2. The structure of the new G was determined by the chemical degradation as formula 3. 3. The Chirality of hydroxymethylglutamic acid (HMGA) part was determined as S configuration by the acquisition of (R)-mevalonaloctone through LiBH4 reduction or G (1 and 2). 4. G (2) does not work as an ion carrier probably, since it does not particularly take metal ion from aqueous solution into an organic solvent. 5. Determination of the chirality of tert-alcohols in gymnoprenol (G'), that is, G without HMGA part, was attempted. Eight isomers of the model compounds corresponding to G' (m=2, n=4) were synthesized and were not discriminated by HPLC and NMR. Since two diastereoisomers of MTP-ethoxy-methoxy derivatives of G' (m=1, n=2) were distinguished by ^1H and ^<19>FNMR, these derivatives may be applicable to identification of the synthetic and the natural G'.
著者
榊原 和征 内田 亜希
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 36 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.439-444, 1994-09-20 (Released:2017-08-18)

Endogenous digitalis-like substances(EDLS) or factors(EDLF) are putative substances which have been thought to be pathogens to hypertention and to possess cardiotonic activity through inhibiting of Na/K ATPase. Some of them seem to regulate natriuresis in kidney and those or the others of them seem to possess an unknown function in eyes, though recognized so far only as pathogens to cataract A lot of compounds have been reported as a substance of EDLF so far. Recently, a conclusion that EDLF was ouabain itself was reported by Hamlyn et al. However, it is still controversial if their ouabain is really endogenous, because it has been known that the digitalis activity derived from foods, especially vegitables, may accumulate in adrenal wherefrom it may be released into blood. Several years ago, Inagami et al reported their EDLF isolated from bovine adrenals possessed the molecular weight of 336. This fact, as well as several information by Grave et al, Bricker et al, and Goto et al, prompted us to deduce a structure for Inagami-Tamura's EDLF and thus lead us to a possible structure, (1). In order to reveal the structure more, we attempted to isolate a lot of amount of the EDLF from 92 kg of bovine adrenals. However, that work ended unsuccessfully. Thus, we decided to elucidate its structure through the repetetion of designing of a target molecule, synthesis, and biological evaluation. Target molecules, (26) and (29), synthesized through 17 steps from estradiol (2), showed the contractile activity on an isolated rat aorta and an isolated Guinea pig atrium. However, they were less potent than less oxygenated compounds, (30) and (31). (See Fig. 3,4,5,and 6.) These results suggest the structure (1) is substancially probable but a further study for a true character of the EDLF should be continued.
著者
永井 宏史 五十嵐 文子 北谷 龍樹 内田 肇 渡邊 龍一 鈴木 敏之 Masoud Shadi Sedghi 長澤 和夫
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 第59回天然有機化合物討論会実行委員会 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.585-590, 2017 (Released:2020-09-20)

Jellyfish, sea anemone and coral are classified as members of the phylum Cnidaria. All cnidarians have a stinging cell, cnidocyte, and its stinging organelle nematocysts. Nematocyst stores venom and coiled needle inside and discharge the needle and inject venom into their prey. Both physical and chemical stimuli trigger nematocyst discharge. A lot of studies on the venom of cnidarians have been accomplished. As the results, it has been revealed that most of cnidarian venoms consisted of proteinaceous toxins. However, there are few studies on the low molecular weight compounds from the cnidarian nematocysts. Therefore, we started the search of low molecular weight compounds in the nematocyst. First target was the venomous jellyfish Chironex yamaguchii (Habu-kurage in Japanese). Nematocysts were isolated from C. yamaguchii tentacles. The isolated nematocyst and C. yamaguchii tentacle without nematocyst were extracted with 1 M NaCl solution using a mini-bead beater machine. The extracts were screened with LC-MS. It was clearly shown that three compounds all of which have [M+H]+ 517 were existed especially in nematocysts. Three compounds were isolated with HPLCs. NMR and MS spectra data of isolated compounds revealed their planar structure as cyclic γ-tetra glutamic acids. The determination of absolute stereochemistry of these compounds was established with organic synthesis, comparing optical rotation values and Marfey’s analysis. Three cyclic γ-tetra glutamic acids were designated as cnidarin4A (1a), cnidarin4B (1b) and cnidarin4C (1c), respectively. Cnidarin4A and cnidarin4B were new compounds. Cnidarin4C was first obtained as the natural product in this study. The existence of these compounds in marine animals has been studied using LC-MS. Cnidarin4s were detected from all the nine tested cnidarians, on the contrary no cnidarin4s were detected from all the seven tested the other phylum animals. Cnidarin4s are especially existed in animals of the phylum Cnidaria. The ecological role of cnidarin4s in cnidarians is a challenging subject to be elucidated.