著者
高橋 正通 柴崎 一樹 仲摩 栄一郎 石塚 森吉 太田 誠一
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.51-59, 2020-06-25 (Released:2020-07-14)
参考文献数
58
被引用文献数
1

砂漠化防止や気候変動緩和のため乾燥地での植林活動が続けられている。乾燥地・半乾燥地土壌の保水性を高め,苗木の活着や成長を促すため,高吸水性高分子樹脂(superabsorbent polymer,SAP)が土壌改良に利用される。本総説ではSAPを添加した土壌の物理性,化学性,生物性を中心に基礎的知見をとりまとめ,効果的な使い方を考察する。SAP添加土壌は以下のような特徴がある。1)SAPによる保水量の増加は土性の影響が顕著で,埴質な土壌より砂質の土壌の方が保水量は増える。2)SAP添加土壌の水ポテンシャルはpF 2.5以下の水分が主で,永久萎凋点pF 4.2以上で保水される量は少ない。3)吸水と排水過程で大きなヒステリシスが認められ,排水過程の方が保水量は多い。4)塩類濃度の高い水には吸水性能が発揮できない。5)ち密な土壌に粒径の大きな膨潤したSAPを入れると,粗孔隙が増加する。6)SAPの吸水・膨潤時には粗孔隙が塞がれ,一般に透水性は低下する。7)SAPのイオン交換容量(CEC)は大きく,砂質土壌のCEC増加につながる。8)SAP施用により土壌が湿潤になり微生物バイオマスが増加する。9)施用SAPによる環境汚染の影響は小さい。以上のような特性から乾燥地においてSAPを有効に使うには,土壌の塩分が比較的少なく,砂質または粗孔隙の大きな礫質の土壌への施用が推奨される。通常,せき悪土壌は貧栄養なため,肥料と併用するには,SAPの適切な施用位置などの検討が必要である。
著者
高橋 正通 柴崎 一樹 仲摩 栄一郎 石塚 森吉 太田 誠一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.229-236, 2018-12-01 (Released:2019-02-01)
参考文献数
72
被引用文献数
3 2

ポリアクリル酸等を材料とする高吸水性高分子(SAP)は1970年代後半から土壌保水材として利用されている。乾燥地・半乾燥地における農林業や緑化へのSAP利用に関する研究報告や実証試験をレビューした。SAPは自重の数百倍の純水を吸収できるが,塩分を含む水では吸水能が数分の1に低下し,土壌中では粒子間での膨潤に限られる。SAPの利用は,1)裸苗の根の乾燥防止や活着促進,2)土壌の保水性と苗木の乾燥耐性の向上,3)植栽穴への施用による活着や成長促進,4)種子の発芽促進,を期待した研究が多い。ポット試験の結果からは,土壌の保水量はSAP添加量に比例して増加するが,粘土質より砂質土壌で土壌有効水量が増加し,樹木の耐乾性も向上する。実証試験からは,SAP施用で活着や成長が概ね良くなるが,土質や樹種によって反応が異なり,過剰な添加はしばしば苗木の成長を低下させる。SAPの課題として,肥料との併用による保水効果の低下,持続性の短い保水効果,現場コストの未検討等を指摘できる。今後は,体系的な実証研究によるSAPの施用方法の確立,有効な樹種の選別,製品性能の改良が望まれる。