著者
鈴木 浩二 柴田 俊忍・松本 英治
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.308-312, 1991-10-15 (Released:2017-08-31)

近年の交通事故の増加に従い,自動車の安全性が社会的に取り上げられる機会が多くなっている。自動車の乗員保護装置として広く採用されているシートベルトに関する,特定の条件下での乗員に及ぽす物理的影響については数多く報告されているが,シートベルトの着用の有無が運転者の安全意識や運転行動に与える影響に関する報告はきわめて少ない, 本報文では,自動車が事故にいたる時系列モデルを示し,シートベルトの着用の有無が事故遭遇率に及ぽす影響の評価法を提案した.また,ある条件下でのシミュレーションをこのモデルに従って行い,シートベルトの着用率の違いによる事故遭遇率・交通事故死亡率の差を比較した.その結果,ある条件下ではシートベルト着用率の向上が必ずしも交通事故死亡率の低下にはつながらないことが判明した.このことから,シートベルト着用運動は適切な交通安全教育が伴って初めて効果を発揮することができ ることがわかった.