著者
岡田 基 松井 明男 米沢 千佳子 伊藤 雅文 柴田 偉雄
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.479-484, 1994 (Released:2011-11-08)
参考文献数
12

婦人科標本中に認められたいわゆるヘマトイジン結晶様物質 (以下ヘマトイジン様結晶と略す) について, 4年6ヵ月の問に当院を受診した41,274人, 標本件数116,360件を対象に検討した.35人 (45件) にヘマトイジン様結晶を認めた.35例の年齢分布は24歳から52歳 (平均38.7歳) であった.疾患内訳は, 腟部ビラン17名, 妊娠7名, 切迫流産4名, 異形成2名, 上皮内癌1名であった.ヘマトイジン様結晶の出現頻度は, 子宮腟部擦過で0.05%, 子宮頸管擦過で0.04%であった.結晶の出現様相は, パパニコロー染色で黄金色ないし黄褐色調に染色され, ロゼット状配列, 樹枝状配列を呈する集塊が主体で, 一部は散在性に楕円形結晶として出現した.大きさは1~341.5μ であった.大多数の結晶は, 組織球や好中球からなる炎症細胞集塊中に認められた.特殊染色ではPAS染色が陽性を呈したが, ほかの粘液染色, 鉄染色, ビリルビン染色は陰性であり, 免疫染色ではフェリチン, S-100蛋白, EMA陰性であった.以上の所見から婦人科標本中に認められたヘマトイジン様結晶は, ヘマトイジンとは異なる物質で, ヘモグロビン系の色素ではないと考えられた.