著者
柴田 益江
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.63-71, 2008-12-20

民生委員は最も地域に根ざした福祉の担い手である。この民生委員に対する高齢者虐待の意識調査をおこなった。アンケート調査の対象は、I市の民生委員定数195人で、回答者は173人であった。(回答率88.7%)。性別は男性83人、女性82人で男女の差はなかった。年齢層は、60歳代が最も多く、51.4%、70歳代は20.2%であり、40歳代5.8%と最も少なかった。民生委員の在任期間は、3年が51人(29.5%)で最も多く、次いで6年が37人(21.4%)であり、全体の50.9%を占めている。9年以上の在任期間を有する者は全体の27.9%であった。民生委員の職業は、特徴的な傾向はないが、主婦が最も多く63人(38.4%)であった。僧侶が6人(3.5%)が目立つ程度である。民生委員の高齢者虐待の体験では、10.4%の人が虐待を発見している。高齢者虐待は増加していると考える人が63.0%であった。民生委員の今後の活動では、虐待の研修や普及活動が必要であると答えた人が、それぞれ、68.2%、66.5%であり、民生委員として高齢者虐待防止の活動に対する積極性がうかがえた。虐待の通報先では、市町村や地域包括センターなど公的機関と答えた人が64.5%であった。虐待のイメージに関しては身体的暴力が83.4%の人が虐待と感じており、暴言は78.6%、無視、世話放棄は、約70%の人が虐待と認知していた。高齢者虐待の要因は介護負担、家族関係によるものが約80%であった。民生委員法の改正に伴う民生委員の「名士」的な役割から抜け出し、住民との対等な立場で地域の福祉に積極的に関わる民生委員の活動について言及している。今後の民生委員の積極的な関わりが期待できるアンケート結果であった。