著者
柴田 真紀
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.23-32, 2015

【目的】精神科病棟でのフィールドワークを通して,看護師が患者と関わる中でその語りを聴こうとするとき,どのような体験をするのかを明らかにし,精神科入院治療における看護師-患者関係の治療的意味とその難しさについて考察する.【方法】参加観察法を用いた実践研究.一病棟(精神科亜急性期)にて1年10ヶ月の間,毎週1回,計84回参加観察を行い,6名の患者との関わりを記録し分析した.【結果および考察】患者と看護師の関わりは他職種と比べて,時間,場所,内容の枠組みが曖昧で,患者の語りは言葉だけでなく身体接触からも生じていた.妄想や幻聴により断片化し混沌とした患者の語りを理解する手がかりとして間主観的接触が重要な役割を果たすことが明らかになった.しかし,その体験は看護師の不安を刺激し,防衛としてのルチーン化した関わりを生み出すこともあった.
著者
柴田 真紀
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.5_29-5_41, 2016

【目的】複数の精神科治療施設に勤務する看護師への半構成的インタビューを通して,精神科臨床において患者の語りを聴く看護師の感情体験なかでも共感疲労のありようについて明らかにし,看護師が患者の語りを聴くかかわりをより積極的に展開するには何が必要かについて考察する。<br>【方法】異なる精神科病院に勤務する8名の看護師に半構成的インタビューを行い,質的記述的に分析した。<br>【結果及び考察】患者の傷つき体験にまつわる語りに耳を傾けようとする看護師は,罪悪感,不安,恐怖,怒り,疲労感などの苦痛な感情を体験し,共感疲労が生じていた。さらに,語りを抑制しようとする病棟文化が,その出来事を同僚に語ることを妨げていた。看護師の感情体験を安心して語り合える病棟文化を醸成することが,患者との語りを促進するだけでなく,看護師のメンタルヘルスにも重要である。