- 著者
-
橋本 亘
谷口 真一郎
柴田 隆一郎
- 出版者
- 一般社団法人 日本救急医学会
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.6, pp.363-366, 2013-06-15 (Released:2013-10-16)
- 参考文献数
- 8
急性大動脈解離(acute aortic dissection: AAD)に類似した症状を呈し,診断に苦慮した急性特発性脊髄硬膜外血腫(acute spontaneous spinal epidural hematoma: ASSEH)の1例を経験した。症例は49歳の男性。ゴルフプレー中に背部痛が出現し救急搬送された。搬入時は苦悶表情で心窩部痛と背部痛を認め,血圧は192/100mmHgと高値であった。搬入後,一過性に両下肢脱力を認めたが改善した。発症様式や症状から急性大動脈解離などの循環器疾患を疑い精査を進めた。しかし諸検査を行ったが確定診断は得られなかった。入院後も背部痛は続いており,一過性に両下肢脱力を認めていたことより磁気共鳴画像検査(magnetic resonance imaging: MRI)を行ったところ頸椎~胸椎レベルに脊髄硬膜外血腫を認め,ASSEHと診断した。神経症状が安定しており保存的加療を行い後遺症なく自宅退院となった。ASSEHの発生は稀であるが,急性期の診断や治療の遅れが後遺症を残す可能性がある疾患であり,救急鑑別疾患のひとつとして認識することが重要である。