著者
本郷 一博 柿澤 幸成 後藤 哲哉 堀内 哲吉
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.9, pp.666-672, 2008-09-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

内頸動脈paraclinoid aneurysmの手術に際しては,硬膜輪およびこの近傍の解剖学的構造を十分に理解しておく必要がある.骨構造で重要なものは,前床突起,視神経管,optic strutなどであり,血管では,内頸動脈のほか,眼動脈,上下垂体動脈,海綿静脈洞などである.膜構造として硬膜輪のほか,falciform ligament,proximal ring,神経としては,視神経,動眼神経がそれぞれ重要な構造である.硬膜輪は,前床突起を除去すると内頸動脈を全周性に囲む膜様構造としてよく認識される.前床突起の底面の薄い膜はproximal ringと呼ばれ,この膜の近位側が海綿静脈洞である.眼動脈に注意しつつ硬膜輪を内頸動脈外膜から切離することにより内頸動脈に可動性が得られ,内頸動脈のさらに近位の処理が可能となる.本稿では,屍体脳で硬膜輪近傍のこれらの構造物の相互関係を示し,実際の手術症例も供覧しつつ解剖に基づいた内頸動脈paraclinoid aneurysmの手術の要点を述べる.
著者
金 太一 柿澤 幸成 清藤 哲史 中冨 浩文 齊藤 延人
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.646-654, 2021 (Released:2021-09-25)
参考文献数
33

脳幹部海綿状血管奇形では, 神経症状のリスク, 病変を全摘出できる視野の確保, およびsafe entry zone (SEZ) などを考慮しつつ, 病変の最表層部を進入口としたアプローチを三次元空間的に検討する必要がある. そのためには, 脳幹内の神経線維や神経核などの解剖知識が必須となる. 本稿では脳幹の解剖を三次元的に理解することを目的として, 脳幹三次元コンピュータ・グラフィックスの無料アプリ 「脳観」 を活用しながら, SEZを中心とした脳幹部の解剖について概説する.
著者
本郷 一博 柿澤 幸成 後藤 哲哉 酒井 圭一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.122-128, 2008-02-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

脳幹部病変のうち,海綿状血管腫,比較的限局した神経膠腫などは摘出術の適応となる場合がある.摘出術に際しては,術前の神経症状の改善を目指すのはもちろんであるが,新たな神経症状を生じさせない手術が必要である.そのためのキーポイントは,脳幹部の神経解剖を熟知し,脳幹病変に対してどこから進入し摘出を行うのが最適か,またその際に起こりうる神経症状がどのようなものであるかを十分に把握することである.そして,神経症状が最小限となる摘出ルートを選択することが重要である.さらに,術中の脳幹モニタリングあるいはマッピングにより,可能なかぎり機能温存を図ることも重要である.本稿では,海綿状血管腫の自験例を提示しつつ,機能温存の点から脳幹内の種々の病変部に対する最適な手術アプローチの選択について考察する.