著者
栃原 比呂志
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-10, 1970
被引用文献数
9

キクから分離され,これまでTAVとして取扱われていたウイルスで,CMVと血清関係がなく,トマトに種子を着生するウイルスをTAVとは別のウイルスとして取扱い,キク微斑ウイルス(chrysanthemum mild mottle virus)と仮称した。本ウイルスは25-30m&mu;の球状粒子でRNAウイルスであり,260/280=1.70-1.78,最高/最低=1.46-1.50の核蛋白によると思われる吸収曲線を示した。260m&mu;における吸光係数は5.6cm<sup>2</sup>/mgで,4.5&mu;g/m<i>l</i>の汁液接種でササゲ1葉当たり100前後のlocal lesionを生じた。収量はタバコ病葉100g当り30-40mgであった。CMVとは沈降係数に差異がなかったが,血清関係は認められなかった。アブラムシで伝染し,キクに無病徴かmottleを生じ,品種により花の矮化,退色,color breakingなどを起こす。CMVよりタバコ,<i>N. glutinosa</i>,ペチュニアなどにenationを生じやすく,ササゲと<i>C. amaranticolor</i>のlocal lesionが小さい。キュウリには感染しない。各地の栽培ギク138株中40株から本ウイルスが分離された。