著者
中島 粂男 栗林 勝利
出版者
一般社団法人 日本繊維機械学会
雑誌
繊維機械学会論文集
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.T249-T263, 1970

目的 第1報においては, 工程中にガイドローラーがなくダンサーローラーのみの系について, それの検出器としての動特性を周波数応答の立場から解析した結果を報告した。本論文ではガイドローラーが有限個ある場合のダンサーローラー系について, ガイドローラーがダンサーローラーの動特性に与える影響を周波数応答の立場から解析する。 結果 1) ガイドローラーが多くある場合のダンサーローラーの動特性は, 第1報の系の変数にガイドローラーの数だけ変数を加えた多元連立微分方程式によりあらわされる。したがって周波数応答は多元連立代数方程式を解く問題となり, 解は電子計算機により求める必要がある。 2) ガイドローラーの慣性モーメントがダンサーローラーに集中した仮想ダンサーローラー系を考え, これの理論をもとのダンサーローラー系に対する近似理論とした。そうすると解析表示されている第1報の理論式がそのまま近似理論として適用できることになる。この近似理論と厳密な理論とを比較した結果, もとのダンサーローラー系の最小共振周波数以下の周波数において, 近似周波数応答が厳密な周波数応答を良好に近似することを確かめることができた。 3) 使用可能周波数上限はダンサーローラーから一番離れた走行糸布についての張力の最小ジャンプ周波数である。そして近似理論から計算した近似最小ジャンプ周波数は, 上記最小ジャンプ周波数を良く近似することがわかった。 4) 使用可能周波数の範囲において, ガイドローラーがダンサーローラーのみの系に与える影響は, ダンサーローラーの慣性に全ガイドローラーの慣性を追加した場合の影響と見なすことができる。したがってダンサーローラーのみの系に比べて, ガイドローラーのある系の使用可能周波数上限は下がる。