著者
岡崎 睦 栗田 昌和
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

身体各部位由来の正常皮膚由来線維芽細胞を用いて、瘢痕形成、色素沈着にかかわるサイトカインの発現解析を行い、線維芽細胞の部位特異性を明らかにした。特に急性期創傷治癒過程において、真皮深層の線維芽細胞は、浅層の細胞に比較して創収縮、細胞外器質の産生に有利な性質を有しており、真皮内の線維芽細胞の部位特異性は、非常に合目的的であることを報告した。さらに、解剖学的な部位による真皮線維芽細胞の特異性を明らかにするため、同一個体由来の顔面真皮線維芽細胞および体幹真皮線維芽細胞について、増殖特性および、瘢痕形成、色素沈着に深くかかわると考えられる因子(サイトカイン、マーカー、細胞外器質)の発現解析を行った。結果として、同一個体由来の顔面、体幹線維芽細胞はほぼ一致した増殖特性を示すが、瘢痕形成にかかわる因子の発現は、顔面由来の線維芽細胞で低発現であることが明らかになった。一方、体幹由来の線維芽細胞は、色素沈着に関するメラニン刺激性サイトカインであるStem cell factorを高発現していた。これらの知見は、顔のきずは体のきずに比べて、肥厚しにくく、色素沈着をきたしにくい、という臨床的な印象とよく一致し、臨床的に経験される創傷治癒の部位特異性は、線維芽細胞の部位特異性に起因することが示唆された。