著者
渡部 英 佐藤 雅彦 根上 直樹 石戸 保典 齋藤 徹也 山田 正樹 佐藤 英章 伴 慎一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.890-895, 2013 (Released:2013-10-25)
参考文献数
16

症例は47歳の女性,急性腹症で来院.腹部全体の筋性防御と圧痛の所見があり,CTで多量の腹水を認めた.汎発性腹膜炎を疑い,緊急開腹手術を施行した.開腹の結果,消化管穿孔の部位はなく,黄色清の腹水を認め,腹腔内全体に白色の硬い小結節が散在していた.手術は試験開腹術に終わった.手術時に摘出した結節と腹水から低分化型腺癌を認め,原発部位不明の癌性腹膜炎と診断した.腹膜播種結節を免疫染色した結果,病理学的に乳癌由来の組織像と診断した.両側乳房に腫瘤は触知しなかったが,CTで左乳腺に淡い陰影像があり,同部位を穿刺した結果,病理学的に腹膜播種と同様の低分化型腺癌を認め,原発部位は乳癌であることが判明した.
著者
佐藤 雅彦 高橋 玄 渡部 英 根上 直樹 斎藤 徹也 山田 正樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.1039-1043, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は36歳,男性.平成19年5月より嘔吐あるも自然に軽快した.同年10月再び嘔吐あり水分摂取も不可能となり入院精査となった.内視鏡検査では胃前庭部に約10cm大の粘膜下腫瘍が認められ,上部消化管造影では同部に境界明瞭な陰影欠損があり造影剤の通過は不良であった.腹部CTでは胃の前庭部に嚢胞性病変が認められた.絶飲食後の内視鏡検査で腫瘍は6cm大にまで縮小し,同時に施行した腫瘍穿刺では無色漿液性の液体を吸引し,細胞診はclassI,アミラーゼ19,588IU/l,CEA 253.9ng/ml,CA19/9 184716.0U/mlと異常高値を呈し,異所性膵,胃嚢胞などを疑った.症状の増悪軽快を繰り返し,また悪性疾患の合併も否定できず同年12月に手術を施行し,病理検査は胃の異所性膵であった.胃の異所性膵によって前庭部での狭窄をきたした症例は比較的稀であり,文献的考察を加えて報告した.