著者
古田 繁行 佐藤 英章 辻 志穂 眞鍋 周太郎 北川 博昭
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1230-1233, 2015-12-20 (Released:2015-12-20)
参考文献数
13

症例は8 歳,女児.半年間持続した膿血性帯下を主訴に来院した.MRI 検査で膣内異物の膣壁穿通を疑う所見を得た.異物の一部の膣外局在確認ならびに腹腔側からの処置に備え腹腔鏡下にダグラス窩を観察したところ,後膣円蓋付近から後腹膜腔に露出した異物と思われる腫瘤様隆起が透見された.膣鏡では膣壁の癒着により異物の観察ができなかったが,子宮鏡を用いて経膣的に異物の確認と全摘除をし得た.摘出異物は長さ1.5 cm の円錐型のプラスティック製玩具であった.異物挿入が性的虐待行為によることも疑われ,児童相談所員が調査したが,その可能性は低いと判断されたため経過観察となった.術後6 か月経過した現在,現在まで性的虐待行為の形跡はなく,帯下の再発も認めない.
著者
渡部 英 佐藤 雅彦 根上 直樹 石戸 保典 齋藤 徹也 山田 正樹 佐藤 英章 伴 慎一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.890-895, 2013 (Released:2013-10-25)
参考文献数
16

症例は47歳の女性,急性腹症で来院.腹部全体の筋性防御と圧痛の所見があり,CTで多量の腹水を認めた.汎発性腹膜炎を疑い,緊急開腹手術を施行した.開腹の結果,消化管穿孔の部位はなく,黄色清の腹水を認め,腹腔内全体に白色の硬い小結節が散在していた.手術は試験開腹術に終わった.手術時に摘出した結節と腹水から低分化型腺癌を認め,原発部位不明の癌性腹膜炎と診断した.腹膜播種結節を免疫染色した結果,病理学的に乳癌由来の組織像と診断した.両側乳房に腫瘤は触知しなかったが,CTで左乳腺に淡い陰影像があり,同部位を穿刺した結果,病理学的に腹膜播種と同様の低分化型腺癌を認め,原発部位は乳癌であることが判明した.
著者
佐藤 英章 古田 繁行 眞鍋 周太郎 辻 志穂 北川 博昭
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.1290-1294, 2016-12-20 (Released:2016-12-20)
参考文献数
18

【目的】従来リンパ管腫(リンパ管奇形)に対する治療の選択肢は硬化療法ならびに手術療法が選択されてきたが,近年漢方治療の報告が散見される.当院においても2013 年以降リンパ管腫全例に対し越婢加朮湯の投与を開始した.その使用経験を検討し,本症に対する越婢加朮湯の有用性を検証する.【方法】2013 年から2015 年まで本症に対し越婢加朮湯を投与した10 例に対し,投与前後の画像所見ならびに臨床経過を検討した.【結果】投与患者の投与開始時平均年齢は8 歳で,画像上リンパ管腫の消失・縮小までの薬剤投与期間は平均5.8 か月であった.発症部位は頭頸部6 例,体幹1 例,四肢3 例であり,病型内訳は全例囊胞状リンパ管腫であり,単房性1 例,多房性9 例であった.治療効果は縮小5 例,消失5 例であり,特に囊胞状リンパ管腫における囊胞の縮小消失により全体的な縮小を得た.全例とも投与中の感染,増大は認めなかったが,1 例に投薬終了後増大を認め再投与を要した.【結論】越婢加朮湯を投与した囊胞状リンパ管腫10 例のすべてに縮小あるいは消失の効果が得られた.囊胞状リンパ管腫に対し本剤は有効と考える.