著者
国枝 タカ子 桐生 敬子
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

比較舞踊研究の手法により,イタリア古典舞踊の「バッサダンツァ」と日本の京都大阪で生まれた「上方舞」の身体表象を,愛知県立大学所蔵のUSA製最新の「モーションキャプチャー」装置により3次元動作解析した結果,両者の共通な特性「みやびな」「上品な」「美しい」という「優雅さ」が,コンピュータによる定量化で実現した。2つの舞踊の動作の感性的表現は定量化されたのである。これにより,世界各地において多様に分布している民族的特性をもつダンスは,その質的表現を「身体づかい」の分析を経由して,定量化できる見通しが開けた。今回明らかにされた定性的特性の身体づかいは,上方舞の「らせん動作」(著者の命名による)と「連綿つなぎ動作」であり,バッサダンツァでは「ゴンドラ波動作」である。いずれも著者が命名した。このほかの成果は次の通り。(1)イタリア,ベネチアとフィレンツェ郊外のフィールドワークにより,クラシックバレエの基礎技法誕生のルーツである「バッサダンツァ」の再構築が確認された。シェア城中世祭で上演されているバッサダンツァと日本の研究グループで再現しているバッサダンツァの同一性と差異について証明できた。(2)バッサダンツァと上方舞の比較による動作辞書が試作された。(3)上方舞「らせん動作」の研究結果は,日本学術会議シンポジウム「アートの力〜文化変容の可能性」において,平成17年6月25日に京都大学で,一部報告される予定である。(4)日本の鹿鳴館ダンスに影響したプロイセンの宮廷舞踊に対するバッサダンツァの関係解明が進んだ。