著者
鳥養 祐二 田内 広 趙 慶利 庄司 美樹
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

トリチウム処理水の海洋放出処分における、安全確認と安心のために、トリチウム水を用いてヒト細胞の培養を行い、その影響を調べた。その結果、①海洋放出するトリチウム処理水濃度と比較して、非常に高濃度なトリチウム環境下でしか細胞死は起きないこと、②モンテカルロ法により、細胞核にトリチウムのβ線のエネルギーを付与するためには、トリチウムは細胞核内に存在する必要があること、を明らかにした。また、③魚の自由水に含まれるトリチウムの濃度を迅速に測定できる手法の開発を行い、トリチウム処理水の海洋放出処分時の迅速な安全確認が行えるようにした。本研究は、トリチウム処理水の処分に大きく貢献する研究成果である。
著者
杉本 妙子 村上 雄太郎
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では、日本語習得研究として現地調査を行い、ベトナム人が習得しにくい日本語音声、発音と聞き取りの誤用のずれ、格助詞に関わる誤用等について明らかにした。また、現地調査に基づく日越語対照研究では、ベトナム語のdi(行く)・den(着く)・授与動詞choの文法化の解明、日越語の助詞の対照と教育上の問題点の指摘等をした。さらにこれら研究成果をベトナムで継続的に発表することにより、ベトナムの本語教育研究の向上に貢献した。
著者
山田 桂子
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、世界初のテルグ語-日本語辞典を作成した。見出し語は約6000語である。テルグ語は話者人口においてインドで3番目に多く、ドラヴィダ系諸語ではもっとも多い。フィールドワークはインドと他の東南アジア等、テルグ移民居住地域でも行い、その成果は見出し語の選定、語法の特定、例文の作成等に反映されている。この辞書は、報告者が2010年に出版した文法書(『基礎テルグ語』大学書林2010年刊)と併用することで、日本人がテルグ語を独習することを可能にするものである。
著者
嶌田 敏行 小湊 卓夫 浅野 茂 大野 賢一 佐藤 仁 関 隆宏 土橋 慶章 淺野 昭人 小林 裕美 末次 剛健志 難波 輝吉 藤井 都百 藤原 宏司 藤原 将人 本田 寛輔
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

大学の諸課題の数量的・客観的把握を促すIRマインドの形成を目指した評価・IR人材の能力定義、教材の開発、教育プログラムの開発および体系化を行った。そのために単に研究・開発を行うだけでなく、様々な研修会や勉強会を開催し、全国の評価・IR担当者の知見を採り入れた。そのような成果を活かして、評価・IR業務のデータの収集、分析、活用に関するガイドラインも作成し、評価現場やIR現場で活用いただいている。加えて、合計14冊(合計940ページ)の報告書を作成した。この報告書は自習用教材としての活用も意識した構成とし、すべてwebページを作成し公表している。
著者
佐藤 環
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究においては、近代日本における中等学校学科課程への弓道教育導入過程に関してその歴史的特質を考察した。まず、学科課程に弓道教育が導入可能となった昭和戦前期の全道府県の学校種ごとに実施状況をデータベース化して全体像を明らかにした。次に山形県を事例とした旧制中学校の弓道教育については、山形県中等学校体育連盟主催の体育大会で活躍することを目標にして活性化がなされた。最後に、東京府、茨城県および新潟県における高等女学校では、殆どの学校で弓道部活動が行われており男子校に比べて活発であった。戦前期中等学校における弓道教育は、主として女子中等学校に浸透していたことが明らかとなった。
著者
高橋 大輔
出版者
茨城大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究の目的は、親権停止中の面会交流の可能性について検討することである。そのために、文献調査や学会などへの参加を通して、親権停止や面会交流について調査した。次に、ドイツ法における親の配慮の剥奪(Entzug der elterlichen Sorge)と交流権(Umgangsrecht)について、文献調査とインタビュー調査を行った。そして、ドイツ法との比較法的視点を踏まえて、親権停止中の面会交流について検討した。
著者
信岡 尚道
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は海浜侵食が最も顕著になる、台風や非常に強い高潮・高波来襲時の海浜流予測を流砂系全体で行えるようにモデル開発を行った.特にWave-setupが高潮時の水位に大きく寄与し、流れ場に大きく影響することを明らかにした。次に実地形への適応の検証を実施した.2005年にアメリカを襲ったハリケーンカトリーナに対しては、水位を精度よく追算でき、流れの場の予測も本モデルで可能である.2006年10月に茨城県沖を通過した爆弾低気圧に伴う高潮の追算については、十分な精度が得ることはできなかった.精度が得られなかった原因を解明するために、通常の波浪でも発生し海浜流と一体となる現象、Wave Setupの予測が問題であるか、風の吸上げ、風の吹寄せ、エクマン輸送が問題であるのかの検討を行った.この計算では2つの領域、一つは流砂系を網羅するもの,もうひとつは観測地点がある大洗港を含む狭い領域にとした.後者では、計算メッシュ幅を可能な限り小さくして、計算メッシュによる誤差を除外できる.大領域と小領域での計算された水位の差はWave Setupにあり、大領域での計算結果に問題があること、それは風の場の変化と複雑な地形に対応した波浪場を十分に再現できないためと推測された.以上の結果から、日本の海岸地形に流砂系全体の海浜流モデルを適応するには、日本の複雑な海岸線および海底地形を考慮できる波浪場および流れ場の計算座標系の開発が新たに必要であるといえる.
著者
冨山 清升
出版者
茨城大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

メダカを用いて、近親交配実験を行った。その結果、野生メダカは、飼育条件下では、近親交配によって、集団の遺伝的多様性のみならず、個体の遺伝的多様性も急速に低下することがわかった。集団の遺伝的均質化がいったん失われると、外部から新たな個体を導入しても容易に回復しないことも明らかになった。また、個体内の遺伝的多様性が失われた個体は、繁殖能力が著しく低下することも判った。RAPDプライマー法を用いて、直接、野生動物種の遺伝的多様性の検出を行い、集団のサイズやその集団が置かれている環境状態と関連性を調査した。調査対象としては、メダカ、オナジマイマイ、ウスカワマイマイを用いた。RAPDプライマー法の結果を用いて、メダカの野生集団、飼育集団、近親交配集団のDNAの多形の程度を数値化した。その結果、多形の程度は野生集団が十分の大きく、近親交配集団では、ほとんど多形が検出されないことがわかった。また、RAPDプライマー多形の程度は近親交配の程度を反映していることが裏付けられた。さらに、DNA多形の失われている個体は、形態においても左右対称性がゆがんでいることがわかった。以上の事実から、RAPDプライマー法を用いることによって、野外集団の近親交配の程度=絶滅の可能性の高さを推定することができることが判り、さらに、形態的な特徴である程度の推定が可能でことも示唆された。
著者
松村 多美恵 菅井 勝雄 (1984) 本田 敏明 菅井 勝雄 新妻 陸利 馬場 道夫
出版者
茨城大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

今回の研究は、IRE-【I】(Ibaraki Daigaku Response Environment-【I】)、IRE-【II】に続くIRE-【III】の開発に関するものである。最終年度である昭和61年度は、昭和59年度および昭和60年度に開発されたタッチスクリーン式コンピュータディスプレイ装置を用いて、実用化に向け、本格的な実験を行うとともに、本システムによる学習効果を実証するため、教材とされた生活単元学習としての「宿泊学習」での実際の宿泊場面や授業場面における児童の行動をビデオに記録し、分析した。具体的には、(1)F養護学校小学部における「宿泊学習」の事前と事後にプログラム学習(ことばと動画の対応、および次の行動の予測の動画選択)を実施した結果、学習成積の改善が見られるとともに、反応時間に関しても、反応時間が短かくなり、標準偏差も小さくなった。(2)児童の宿泊場面における行動を17項目の児童に対する質問調査、25項目のVTR反復視聴分析、および担任教師による21項目の行動評価によって検討した結果、多くの場面で自律性の向上が見られた。(3)実験群と統制群を設定し、実験群にみるプログラム学習を実施したところ、実験群において、生活単元学習としての「宿泊学習」の第1回の授業場面の行動がすぐれていた。すなわち、発語や指さしをしながら積極的に授業に参加している行動が、統制群より統計的に有意に多かった。以上の結果により、本システムの有効性が認められた。従来の視聴覚的方法であれば、宿泊学習のビデオを事前に視聴して、その効果を調査するという方法をとったであろうが、本システムは、場面を分解整理した上、児童自らが、タッチスクリーンに反応し、選択視聴するという方法をとり、児童の大きな興味を引いたように思われる。本結果の一部は、日本教育工学会(1986)において発表された。
著者
小椋 郁馬
出版者
茨城大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

近年のアメリカでは、民主党に帰属意識を持つ有権者が共和党支持者を、共和党に帰属意識を持つ有権者が民主党支持者を嫌い、互いに交流を避けようとする、「感情的分極化」と呼ばれる現象が深刻になっている。本研究では、アメリカの有権者が民主党/共和党支持者の社会的な属性や政策争点態度についてステレオタイプを持っていることに着目し、独自のサーベイ実験を行うことで、(A) 政党ステレオタイプが感情的分極化に与える効果及び(B) 政党ステレオタイプを修正する情報が感情的分極化を低減させる効果を実証的に検討する。
著者
小島 純一
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

表形形質(成虫、幼虫形態、巣構造)ならびにDNAシークエンスデータを用いて解析して得た、ハラホソバチ亜科の分岐図上に巣構造ならびに社会行動の形質をプロットし、最適化解析を行なったところ、次のことが示された。(1)巣材として植物繊維を使用するのが祖先的であり、Liostenogasterの一部の種で泥の使用が進化した。(2)アリの攻撃への防御として、巣基部の傘状の構造物が祖先的であり、粘性の分泌物の使用、外被の構築が独立に進化した。(3)Eustenogasterにおける外被構築の進化に伴って、ワーカーを欠き、巣内の成虫は創設メス単独という生活史が二次的に生じた。
著者
立花 章
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

放射線適応応答では、DNA2本鎖切断(DSB)修復の正確度が上昇していると考えられる。放射線適応応答に関与するDNA修復機構を明らかにするために、DSB再結合に関与するDNAリガーゼの発現抑制を行った細胞での放射線適応応答を検討した。その結果、非相同末端結合修復のうち、「古典的経路」(C-NHEJ)で作用するDNAリガーゼIVが関与していることが明らかになった。これらのことから、放射線適応応答にはDNAリガーゼIVが作用するC-NHEJが関与しているものと考えられる。