著者
竹内 伸行 田中 栄里 桑原 岳哉 臼田 滋
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.53-61, 2006-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
45
被引用文献数
3

Modified Tardieu Scale(MTS)は,関節可動域(Range of Motion ; ROM)と筋の反応の質(Quality of Muscle Reaction ; QMR)を測定する痙縮評価指標で,測定肢位と筋の伸張速度が規定されている特長がある。欧米ではMTSを用いた研究報告は多いが,信頼性や臨床的有用性を検討した報告は散見される程度である。国内ではMTSを用いた報告は見当たらない。今回,脳血管障害片麻痺患者の麻痺側足関節底屈筋を対象に,①ROMとQMRの検者内,検者間信頼性(n = 13),②筋をゆっくり伸張した時のQMRと速く伸張した時のQMRの関連性(n = 28),③QMRとModified Ashworth Scale(MAS)の関連性(n = 30)の検討を行った。本研究の目的は,これらの結果からMTSの臨床的有用性を検討することである。測定肢位は背臥位で,膝伸展位と膝屈曲位とし,足関節底屈筋を他動的に伸張して測定した。筋の伸張速度は,MTSの規定速度であるV1(できるだけゆっくり)とV3(できるだけ速く)を用いた。結果,①ROMの信頼性は,検者内,検者間共にICC = 0.98〜0.99,QMRの信頼性は検者内がκ = 0.73〜1.00,検者間がκ = 0.71〜1.00であり,高い信頼性を認めた。②V1のQMRとV3のQMRの関連性は,膝伸展位は弱い正の相関に止まり(rs = 0.39),膝屈曲位は相関を認めなかった(rs = 0.08)。③V1のQMRとMASの関連性は両肢位共に強い正の相関(rs = 0.89〜0.90)を認めたが,V3のQMRとMASの関連性は両肢位共に弱い正の相関(rs = 0.34〜0.38)に止まった。本研究結果では,MTSの高い検者内,検者間信頼性を認めた。さらにQMRは伸張速度を変えることで非反射性要素と反射性要素を考慮した評価が可能と考えられた。MTSは,痙縮評価指標として臨床的有用性が高いと示唆された。