著者
桑原 昂 西崎 郁子
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.49-54, 1969

野蚕絹フィブロインの希薄な酸・アルカリ処理の際の溶出過程におけるフィブリルの生成・形態について, 野蚕種別および前報に報告した家蚕絹フィブロインとの差異を電子顕微鏡によって比較観察した。<br>(1) 野蚕種別により多少の差はあるが通常の精練方法によりセリシンを除去した野蚕絹フィブロインは, ほゞ斉一な経縞状のフィブリルから成り立っている。<br>(2) 希薄なアルカリの溶出作用によりフィブリルは, 錯そう, 離合, 崩壊して不規則に分岐もしくは渦巻, 断層状へと変化する。<br>(3) 希薄な酸では繊維軸方向あるいはある傾斜した方向に波浪または波紋状および分岐または枯木様フィブリル集束が観察される。<br>(4) 野蚕絹フィブロインにおけるフィブリル生成は家蚕絹フィブロインに比し可成り明確にしかも微細フィブリルが連続して見られ, 希薄な酸処理の場合にこの傾向はとくに顕著である。