著者
奥平 敬元 原 郁夫 桜井 康博 早坂 康隆
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.42, pp.91-120, 1993-04-30
被引用文献数
20

岩国-柳井地域領家帯は主に低圧型変成岩(領家変成岩類)と花崗岩類(領家及び広島花崗岩類)から構成される。領家花崗岩類は古期花崗岩類と新期花崗岩類に大別され, 前者はシート状であり後者はストック状である。領家変成岩類は四つの鉱物帯(黒雲母帯, 菫青石帯, ザクロ石帯, 珪線石帯)に分けられ, これらと領家古期花崗岩類は三つのナップ(構造的上位から通津ナップ, 大畠ナップ, 柳井ナップ)を形成している。通津ナップど大畠ナップとの間には, 最高変成作用時の温度圧力条件において約3kb, 200℃のギャップがある。また, 柳井ナップは大畠ナップの構造的下位に位置しているが, 柳井ナップは大畠ナップよりも低温低圧の温度圧力条件を示す。このことは最高変成作用時の温度圧力構造が, 後の造構作用によって改変されたものであることを示している。菫青石帯には二つのミグマタイト帯(天ケ岳及び長野ミグマタイト)が存在するが, これらはより深部(約6kb)で形成され, 破砕帯に沿って貫入上昇し, 現在の位置に定置したものである。ミグマタイト中の含コランダムレスタイトの変成作用の解析結果から二つの変成時相(M0, M1)が識別され, M0変成作用は中圧型に対応することが明かとなった。M1変成作用はミグマタイトや領家古期花崗岩類の貫入直後に行なわれ, この変成作用はこれらの貫入岩の接触変成作用である可能性が高いパイルナップ構造の形成はM1変成作用後で, 領家新期及び広島花崗岩類の貫入前である。