- 著者
-
梅原 三貴久
- 出版者
- 東洋大学
- 雑誌
- 新学術領域研究(研究領域提案型)
- 巻号頁・発行日
- 2011-04-01
ストリゴラクトン(SL)は、植物の根から土壌中に放出され、アーバスキュラー菌根菌の菌糸分岐や根寄生植物の種子発芽を刺激する根圏におけるシグナル物質である。また、SLは植物の枝分かれを抑制するホルモンとして働く。SL関連突然変異体は、野生型に比べ過剰な枝分かれを示すだけでなく、葉の老化が遅延する。このことは、SLが枝分かれだけでなく、葉の老化制御にも関わっていることを示唆している。そこで、イネのSL関連突然変異体の葉にSL合成アナログGR24を処理したところ、SL生合成欠損変異体では葉の老化遅延が回復したが、SL情報伝達欠損変異体では変化が認められなかった。また、リン酸欠乏条件下で栽培したイネの葉は、SLに対する応答性が増加した。これらの応答性は、枝分かれにおける応答性と同様であることから、SLが葉の老化も制御していることが明らかになった。さらに、イネの収量に対するSLの影響を調査したところ、野生型とd10では水耕液中のリン酸濃度を減らすと収量が減少したが、d3ではリン酸濃度を減らすとむしろ収量が増加した。CE-MS解析の結果から、d3ではアスパラギンやグルタミンなどのアミノ酸含量が著しく低下していた。これらの結果は、D3遺伝子の下流にアミノ酸の生産制御機構が存在することを示唆している。今後は、d3依存的な窒素代謝機構の存在を探索するとともに、d3変異体での特異的な応答の原因を明らかしたいと考えている。