著者
杉原 重夫 叶内 敦子 梅本 亨 竹迫 紘 小疇 尚
出版者
明治大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

平成4年度は、伊豆半島先端部の蛇石大池湿原において、深度40mまでのオールコア採取の機械ボーリングを行った。ここでは、深度35.3mまで池沼性の有機質堆積物が認められ、示標テフラの同定、^<14>C年代測定から最終氷期以降の堆積物であることが明らかになった。また花粉分析の結果、約5万年以降の植生変化が明らかになった。このほか東北地方南部から中部地方にかけての湿原(矢の原湿原など)においてシンウォールボーリングを行い、試料を採取して^<14>C年代測定などの分析を行った。平成5年度は、内陸の乾燥地域の湿原(長野県の八島ヶ原湿原)と、日本海側の多雪地域の湿原(福島県の大曽根湿原)においてボーリング調査を行った。八島ヶ原湿原では採取した約6mの試料全層について、微化石(花粉・珪藻)分析とテラフの同定・レスの検出を行った。大曽根湿原(福島県)では約3mの試料を採取し^<14>C年代測定と花粉分析を行った結果、完新世に形成された湿原であることが明らかになった。平成6年度は、日本海側の多雪地域の湿原(福島県苗場山山頂湿原・新潟県小松原湿原)においてボーリング調査を行った。これらの湿原の泥炭層から妙高系、浅間系のテフラが数枚検出された。湿原堆積物の花粉分析の結果、両湿原とも完新世に形成された湿原であることが明らかになった。本年度までに行った各地の湿原調査・研究の結果、湿原の形成年代や成因が明らかになった。また、湿原堆積物の花粉分析から最終氷期の寒冷化の開始時期について新たな知見を得て、湿原の気象観測結果と既在の気象データを整理し、実験的に山地の降雪現象をシミュレイトした。