著者
梅本 優子
出版者
和歌山大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

少人数教育が,従来のシステムよりもどのような優れたカリキュラムや教育方法を生み出せるのか,その可能性とカリキュラム開発の内実を,平成20年4月から平成21年3月まで,定数30名の第1学年3学級と第2学年3学級及び,定数16名の1.2年複式学級の生活科の実践を中心に明らかにしてきた。カリキュラム開発ならびに教材開発の実際は,以下のとおりである。生活科における『附属っ子ミュニケーション"和み"大作戦!』プログラムの設定○ 構内に咲く花を活けたり,煎茶や基礎的な茶道,和菓子や箸袋作り体験等,現代生活の中で消えつつある日本のよき自然・季節感,伝統文化,生活習慣などを取り入れたプログラムを作成し,授業実践した。○ 学習活動の中で,『和歌山城内の茶室での茶会』や子どもたち主催の『夏祭り茶会』等も行った。地域活動参画の一環として,青年会議所主催『秋季茶会』,ならびに『和歌浦万葉薪能』等にも参加した。○ 図工科・食育等,他教科・領域等との関連を図った。菓子皿作りの陶芸カリキュラムの実践も試みた。○ 保護者による"和み"ボランティアを結成し,保護者参画授業のモデルを示すことができた。本研究実践の経過途中(平成20年12月)と事後(平成21年3月)に,児童ならびに保護者に質問紙調査を実施した。その結果,少人数で上記カリキュラムのもと学習してきた児童に,以下のことが明らかになった。○ 『日本のよき生活(衣食住)習慣』とともに『初歩的な礼儀・作法』を身につけ,『好ましい人間関係』を構築することができるようになった。○ 落ち着いた学級集団のなか,他教科の学習にも意欲的に取り組める児童が増えてきた。○ 初めて経験する初歩的な『活け花』や『茶道』が徐々に出来るようになり,成就感・達成感を生み,自己肯定感へと繋がった。また,30人という規模も,互いを認め合える学級集団として適切である。人間関係が希薄になりつつある社会の中で,今後さらに児童のよりよい人間関係の構築していくための学校教育の在り方を探っていく必要がある。また,中・高学年の児童にも教育効果がもたされると思われる。