著者
梅村 和弘 菅原 和夫 伊藤 巌
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.836-840, 1989-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
19

雄牛が発情牛を識別する際の,視覚,嗅覚,聴覚の役割について検討した.1. 並べて繋留した発情牛と非発情牛の後方5mから雄牛を放し,雄牛がどちらの雌牛を選択するかを調査した.次に,両雌牛の後方数cmのところに寒冷紗の幕を張り,通気性はあるが,雄牛が直接視覚で雌牛を捉えられないようにし,同様の調査を行なった.その結果,寒冷紗の幕を張った場合でも,雄牛は雌牛に接近し,臭いをかぐなど若干の探索行動をした後,正確に発情牛を識別した.2. 並べて繋留した発情牛と非発情牛の頭部以外を透明ビニールシートでおおい,その後方から雄牛を放した,その結果,雄牛は両雌牛に興味を示し接近するものの,発情牛を識別することは不可能であった.3. パドック内の両端に置いた2台のテープレコーダーから,雄牛に発情牛と非発情牛(子牛に対する母牛の鳴き声)を同時に聞かせた.その結果,いずれの鳴き声にも興味を示し接近したが,発情牛の鳴き声に特に誘引されるということは見られなかった.以上の結果から,雄牛は遠方からは視覚,あるいは聴覚により雌牛の存在を知り接近するものの,発情牛の識別には嗅覚が重要な役割を担っているものと考えられた.