著者
梅根 健一
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1と略す)は以下の特徴をもつ。(1)HSV-1はmaster herpesvirusであり、HSV-1の基礎研究は、最先端レベルで遂行されている。(2)HSV-1はヒトの重要な感染性病原体であり、ヒト集団の80-90%がHSV-1に感染しており、ヘルペス脳炎や角膜ヘルペス(失明の最大の原因)のような重篤な結果を引き起こす。HSV-1のゲノムDNA成熟機構について以下のことが判明している。(1)DNA成熟部位(シス因子)としてのa配列が、HSV-1DNAの複製後に切断され、ウイルス粒子中にウイルスDNAが包み込まれる(DNAゲノムの成熟)。(2)DNA成熟に関与する遺伝子(トランス因子)として、10余りのHSV-1遺伝子の必要性が判明して、細胞遺伝子としてTAF_<II250>遺伝子の必要性が知られている。<研究の概要>HSV-1のDNA成熟において、中心的役割を担っているのはa配列である。しかし、a配列のDNA配列は分離株ごとに大きな相違が認められ、どの配列がどのような影響をDNA成熟に及ぼしているのかの判断に、困難を伴う状況にある。また逆に、それらの相違の存在から、a配列の機能の必須部分を抽出することが可能となり得る。そこで本研究では、a配列のコンセンサス配列を明らかにすることを目的として、以下のことを行った。(1)研究対象とするHSV-1株の選定:我々は、数百株のHSV-1株についてのDNA多型情報を持つ。これらの株から、DNA多型に関して多様性の確保を考慮しつつ、HSV-1株を30株選択した。(2)HSV-1株DNAの抽出:選択されたHSV-1株を培養細胞にて増殖させ、ウイルスDNAを抽出した。(3)HSV-1株a配列の分子クローニング:抽出されたHSV-1DNAを制限酵素で切断の後に電気泳動し、a配列を含むDNA断片を電気泳動ゲルから回収し精製し、クローニングベクターへ挿入し、a配列を分子クローニングした。(4)a配列のDNA配列の決定:分子クローニングされたa配列のDNA配列を決定した。(5)以前に報告されたものとは異なる、構成パターン又はDNA配列を持つ、a配列の存在が判明した。