著者
川原田 洋 宋 光燮 梅沢 仁
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

ダイヤモンドトランジスタの性能向上および安定性向上を目的とした要素技術として、(1)FIB装置を用いたシート抵抗IkΩ/sq.以下の局所低抵抗層の形成技術、(2)2×10^<-4>[Ωcm]の熱的安定性のある超高濃度ボロンドープダイヤモンド(ボロン濃度:1.42×10^<22>[cm^<-3>])の成膜技術、(3)従来のCaF_2絶縁膜よりも3桁以上のゲートリーク電流低減を達成した、高品質なAl_2O_3ゲート絶縁膜形成技術、(4)低消費電力化を目的とした、オゾン処理によるダイヤモンドFETの閾値制御技術、を開発した。デバイス評価手法としては、De-embedding手法を導入することで、寄生成分の影響を除去し、ダイヤモンドMISFETの真性特性評価が可能となった。また、水素終端ダイヤモンド中に形成されるホール蓄積層のキャリア走行メカニズム解明を念頭に、移動度の実行垂直電界依存性を明らかにした。デバイス作製のプロセス技術としては、ゲート長0.2μm以下の微細ゲート構造作製のためのセルフアラインプロセスと、ゲート抵抗の低減を目的としたT型ゲート電極構造の作製プロセスを確立した。ダイヤモンドMISFET作製と特性評価としては、前述の微細プロセス技術を用いて、ゲート長0.15μmのダイヤモンドMISFETの作製に成功し、遮断周波数30GHz、最高発振周波数48GHzを達成した。また、Al_2O_3ゲート絶縁膜を用いたダイヤモンドMISFETの作製に成功し、絶縁膜厚3nm、ゲート長0.3μmにて遮断周波数30GHz、最高発振周波数60GHzを達成した。更に、世界で初めてダイヤモンドMISFETにおいてロードプル測定を行い、ゲート幅100μm,ゲート長0.3μmのデバイスにおいて、1GHzの高周波大信号入力時に電力密度2.14W/mmが得られた。この値は報告されているGaAsFETやSi LDMOSの電力密度の最高値よりも優れたものであり、ハイパワー高周波トランジスタとしてのダイヤモンドFETの優位性を確認できた。