著者
梅沢 彰馬 塚本 勝巳 多部田 修 山川 紘
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.440-444, 1989-03-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
16

ウナギ耳石の初期の輪紋形成過程を明らかにすることを目的として, 孵化仔魚とシラスウナギの耳石の微細構造を検討した.3種の耳石の内, 扁平石は孵化時に既に形成していた.耳石は扁平で楕円形をしており中心部に核が観察され, その直径は8.3±1.02μmであった.孵化後, 耳石は目令と共に直線的に成長した.耳石上の輪紋は孵化時には認められなかったものの, 2日後, 4目後および6日後の魚の耳石には, それぞれ平均2.1本, 3.6本および6.0本認められた.輪紋数 (Y) と孵化後の日数 (X) の間には, 次のような極めて相関の高い直線関係が得られた: Y=0.96X+0.06, r=0.913, N=40, 一方, 95%のシラスウナギの耳石中心部において, 直径6-12μmの極めて明瞭な輪紋 (check ring) が認められた.これは光学顕微鏡下では幅の広い暗帯として, 電子顕微鏡下では深くエッチングされた輪紋として観察された.また, この輪紋は孵化時の耳石直径とほぼ等しく, 本種は孵化輪を形成するものと考えられた.以上の結果より直径6-12μmの孵化輪の外側の輪紋数は, その魚の目令を示すことが明らかになった.