著者
梅津 昭彦
出版者
公益財団法人 損害保険事業総合研究所
雑誌
損害保険研究 (ISSN:02876337)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.1-28, 2017-02-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
24

アメリカ法における保険証券の規制という名の解釈問題は,契約の解釈として伝統的な契約法における解釈の諸ルールを適用することが基本であるが,近時再び注目されるのは,保険証券を「商品」または「物」として捉え,製造物責任(products liability)を基礎とする保険証券規制の提言である。本稿は,D. Schwarcz教授の製造物責任を基礎とする保険証券規制モデルを紹介し,アメリカ法における保険証券規制に対する新たな視点を確認する。それによれば,商品としての保険証券について警告上の欠陥または設計上の欠陥が認められる場合には,被保険者に保険担保に対する権利を与えようとするものである。また,K. S. Abraham教授は,製造物責任法について認められる要件の適用に際しての問題,例えば,商品の欠陥を認めるためのテストの多義性と保険契約者の選好多様性の理解から直ちに製造物責任を保険証券規制に応用することについては消極的に評価している。本稿は,以上のような両教授の検討について整理を行うことにより,アメリカ保険法における保険証券の規制・解釈の新たな視座を明らかにした。