著者
飯岡 由紀子 梅田 恵
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.16-26, 2013 (Released:2016-12-13)
参考文献数
15

要 旨目的:本研究の目的は,ホルモン治療中の乳がん女性の苦痛と対処を明らかにし,その看護を考察することである.方法:外来通院にてホルモン治療中の50歳未満の乳がん女性7名を対象に,グラウンデッドセオリーアプローチを参考に質的帰納的研究を行った.半構成的面接の逐語録をデータとし,質的研究者のスーパーバイズのもと分析した.結果:苦痛は7つの大カテゴリー[生活に支障をきたすつらい症状][コントロールできない気分の不安定さ][自分に対する自信の低下][今までとの違いによる混乱][治療継続に対する葛藤][周囲からの孤立感][自分で対応することへの不安]を抽出した.乳がん女性は治療の副作用や混乱,孤立感などを感じており,コアカテゴリーは『つらい症状とコントロール感低下に伴う混乱』とした.対処は6つの大カテゴリー[体と向き合い生活を再構築する][軌道修正しつつ状況に対応する][周囲のサポートを実感する][信じて気持ちを保つ][あがかないようにしてエネルギーを保つ][見通しをもって事前に備える]を抽出した.心の支えを得ながら苦痛に臨機応変に対応しており,コアカテゴリーは『心の支えをもち軌道修正しつつ状況に対応する』とした.結論:ホルモン治療中の乳がん女性は,治療の副作用とともにサバイバーとして自分の生活や社会環境に適応する過程で生じる混乱や孤立感などに苦痛を抱いていた.それらの苦痛に対して,心の支えを得ながら臨機応変に対応していた.