著者
梅野 哲義
出版者
久留米大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

成長・発達前の新生児の声帯を電子顕微鏡下に観察し,その超微構造を学会で講演し論文として発表してきた。本年度の研究実績の概要は,1.電顕的に新生児声帯の模様部は線維成分に比べて基質が豊富であった。また線維成分に関しては,膠原線維は比較的発達していたが,弾性線維は未熟であった。線維芽細胞は成人に比べて多かったが,膠原線維や弾性線維をほとんど産出していなかった。声帯靱帯はまだ形成されておらず声帯の層構造は認めなかった。振動体として新生児の声帯をみると,弾性線維は非常に未熟であり弾性が低く,声帯振動にとって有利な構造ではないと言えた。2.新生児声帯の前端と後端には黄斑がすでに形成されており,その大きさは成人の黄斑とほぼ等しかった。新生児の声帯黄斑は線維芽細胞,膠原線維,弾性線維,基質からなっていた。線維芽細胞の密度は成人に比べて大きかった。新生児の声帯黄斑では線維芽細胞が膠原線維と弾性線維の産生をすでに盛んに行っていた。出生後の声帯振動が黄斑の線維芽細胞をさらに活性化し,成長とともに声帯靱帯を形成し,声帯の層構造が完成することが予想された。新生児の声帯黄斑は声帯靱帯などの声帯の線維組織の成長・発達にとって重要な構造物といえた。以上のような新生児声帯の超微構造が本研究で新たに解明された。現在,研究結果の一部は論文として掲載された。残りの研究結果は現在投稿準備中である。またさらに新生児声帯の超微構造の研究を進めている。