著者
久保 加織 梶原 恵美 中田 理恵子 堀越 昌子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.2044, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】家庭用冷凍冷蔵庫の普及に伴い、食品の保存形態は変化した。冷凍庫内温度は-20℃に設定され、微生物の繁殖限界である-18℃を下回っているため、冷凍は有効な保存方法である。しかし、脂質酸化は-20℃でも進み、油焼けも起こる。本研究では、日常よく食されるあじといわしを用いて、家庭用冷凍庫内での保存中の成分変化について検討した。 【方法】魚(あじ、いわし)は大津市内のスーパーマーケットで購入後、直ちに三枚に卸し、ラップフィルムで1枚ずつ包み、5枚ずつを市販のジッパー付袋(冷凍、解凍用)に入れて家庭用冷凍庫内で保存した。保存後は、冷蔵庫内で12時間かけて解凍し、そのまま、あるいは焼き調理を行った後、分析に供した。ドリップ量、水分含量は定法通り、遊離アミノ酸はアミノ酸分析計により分析した。揮発性成分は40℃でSPMEファイバーに吸着させ、GCMSにより分析した。脂質をBrigh and Dyer法により抽出し、過酸化物価(POV)とカルボニル価(CV)の測定、ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸分析を行うことで脂質酸化について検討した。 【結果】脂質のPOVは冷凍期間が長くなるにつれて徐々に増加し、あじは8週、いわしは12週で20meq/kgに達したが、CVの上昇はほとんどみられず、脂肪酸組成にも大きな変化はなかった。ドリップ量、遊離アミノ酸量は保存期間が長くなるほど増加した。検出される揮発性成分も冷凍期間が長くなるにつれて増加し、腐敗臭や生臭い臭をもつケトンやアルデヒドが出現した。家庭用冷凍庫で魚を保存すると、8~12週間で脂質の初期酸化が進み、過酸化物が蓄積すること、味や風味に関わる様々な問題も生じさせることが明らかになった。