著者
花岡 輝彦 樋口 宗隆 梶本 貴紀 池田 卓 藤田 弘輝
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.235-240, 2022 (Released:2022-12-26)
参考文献数
3

近年,電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池は高エネルギー密度化,高出力密度化が進んでおり,それに伴い異常時の電池の発火リスクが高まるなどの安全性低下が懸念されている。特にLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2等のニッケル比率の高い層状岩塩型の活物質を正極に用いた電池セルは,エネルギー密度が高い一方で,内部短絡などの異常発生時において発熱量が大きいため安全性が低下することが報告されており,これら材料を含む車載用電池パックの安全性の確保が課題となっている。この課題に対して,電池の安全性をシミュレーションモデルで検証することで開発の手戻り削減などの効率化が期待できる。そこで本研究では活物質の組成の違いがセル異常時の発熱量に及ぼす影響を明らかにし,異常時の電池セル及びモジュールの温度挙動を素早く計算できる1次元シミュレーション技術を確立した。また,モジュールの安全性の向上を目的に,構築したモデルを用いてモジュール部材の材質変更による温度上昇抑制の効果検証を実施した。本稿ではその取り組みについて報告する。