著者
山本 研一 中川 興也 氷室 雄也 渡邊 重昭 小橋 正信 吉田 智也 三好 雄二 伊藤 司 鍵元 皇樹 八巻 悟 片岡 伸介
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.283-288, 2019 (Released:2019-12-02)
参考文献数
5

車両の軽量化と乗心地の向上,ロードノイズ低減との両立をねらい,振動の伝達系にあたる車体フレームを対象とした減衰制御構造(減衰節構造,減衰ウェルドボンド接合),及び本構造に使用する振動減衰性に優れた構造用接着剤を新たに開発した。減衰節構造について,同等質量の簡易フレームを用いて基礎検証した結果,剛性に加えて減衰性が向上し,高い質量効率で振動が低減することを確認した。実車を用いた効果検証では,車体の振動が低減したとともに,100km/h走行時のロードノイズが運転席で最大5dB低減することを確認した。
著者
久我 秀功 太田 健太郎 伊川 雄希 坂下 泰靖 西田 周平 溝兼 通矢 岡本 哲
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.102-106, 2019 (Released:2019-12-02)
参考文献数
1

新型MAZDA3の開発では,CO2排出量低減技術の一環として,実際の市場環境に近い走行状態で車両全体の風流れの運動エネルギーマネジメントを行い,空気抵抗の低減とサーマルマネジメント効率化の両立を目指した。この実現にむけ,フロントグリルを通過する風を用いてラジエーターを効率的に冷却するための導風構造を設定し,無駄な風を極限まで減らした。そして,アクティブエアシャッターをラジエーターの全面に配置し,シャッター開度を6段階で制御することで,走行シーン毎にエンジンルーム内の部品温度をコントロールするとともに,排出する際に生じる風流れの運動エネルギー損失が最少となる風量にコントロールした。更に,冷却に用いた風を排出する際,車両周りの風流れの運動エネルギー損失量が最少となるように構造を作り込むことで,クラストップレベルの空気抵抗係数とCO2排出量の低減に貢献した。
著者
横尾 健志 新井 栄治 坂井 隆則 緒方 佳典 橋本 真憲 森永 裕太 宮田 晋輔
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.59-65, 2023 (Released:2023-12-22)
参考文献数
2

マツダは,約11年ぶりに復活となる新型ロータリーエンジン8C型を開発した。小型高出力な本エンジンを発電機として,シリーズハイブリッドで活用するものであり,地球環境を守るための施策として掲げているマルチソリューション戦略の1つである。本エンジンの開発でも「飽くなき挑戦」の精神を継承し,内燃機関の進化ビジョンを実現する熱効率改善技術,構造技術の進化と最適化に取り組んだ。ロータリーエンジンで課題となる冷却損失は,基本諸元を見直し最適化した。従来鋳鉄製であったサイドハウジングは材料をアルミに置換し軽量化した。また,燃焼進化にあわせて適宜レシプロエンジン構成技術の活用と高負荷燃焼に耐えうる構造強化を行った。レシプロエンジンと比べ,求められる出力性能をよりコンパクトなユニットで実現できる特長を活かし,サイズの大きな高出力モーター,ジェネレーターと組み合わせて同軸上に配置しながらも,MX-30の車体フレームへの搭載を可能とした。
著者
塚根 芳将 富家 進 元吉 菜緒子 吉村 匡史
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.90-95, 2019 (Released:2019-12-02)
参考文献数
1

新型MAZDA3では人馬一体の走る歓びを更に進化させるために人の行動原理を分析,人が普段から歩行する際に使っているバランス保持能力に着目した。そして運転中でもバランス保持能力を発揮できることが,車と人を一体に感じさせる車のあり方であると考え,シート,車体,サスペンション,タイヤの機能を根本から見直し,新たな車両構造技術(SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE)を開発した。その結果,新型MAZDA3では,まるで自分の手足のように違和感なく運転でき,長時間運転しても疲れを感じない運動性能を実現させ,人馬一体の向上と走りの質を高めることができた。
著者
花岡 輝彦 樋口 宗隆 梶本 貴紀 池田 卓 藤田 弘輝
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.235-240, 2022 (Released:2022-12-26)
参考文献数
3

近年,電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池は高エネルギー密度化,高出力密度化が進んでおり,それに伴い異常時の電池の発火リスクが高まるなどの安全性低下が懸念されている。特にLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2等のニッケル比率の高い層状岩塩型の活物質を正極に用いた電池セルは,エネルギー密度が高い一方で,内部短絡などの異常発生時において発熱量が大きいため安全性が低下することが報告されており,これら材料を含む車載用電池パックの安全性の確保が課題となっている。この課題に対して,電池の安全性をシミュレーションモデルで検証することで開発の手戻り削減などの効率化が期待できる。そこで本研究では活物質の組成の違いがセル異常時の発熱量に及ぼす影響を明らかにし,異常時の電池セル及びモジュールの温度挙動を素早く計算できる1次元シミュレーション技術を確立した。また,モジュールの安全性の向上を目的に,構築したモデルを用いてモジュール部材の材質変更による温度上昇抑制の効果検証を実施した。本稿ではその取り組みについて報告する。
著者
土井 政寛 德永 隆司 藤原 康祐
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.48-51, 2021 (Released:2022-02-08)
参考文献数
1

MX-30 EVモデルの外部充電は欧州仕様ではCCS2(TYPE2),北米仕様はCCS1(TYPE1),日本仕様ではCHAdeMO+AC充電(TYPE1)を搭載し世界の充電方式をサポートしている。これらの充電規格と充電設備全てに対して互換性を持たせることが開発の課題である。MX-30の充電システム開発では,これら多数の変化点を持った充電システムの同時開発が求められたことに対し,一括制御構造を構築し主に固定と変動に制御機能を分けて管理することにより効率化を実現した。加えて机上検証環境として充電設備モデルをMILS(Model In the Loop Simulation)及びHILS Hardware In the Loop Simulation)環境内に構築して充電システムの成立性を早期に検証した。本稿ではこれら外部充電システム開発について報告する。
著者
六浦 潔 若松 功二 山中 尋詞 平尾 幸樹 西嶋 孝祥 手島 由裕
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.119-124, 2019 (Released:2019-12-02)
参考文献数
3

新型MAZDA3では,マツダが考える音響性能の理想を定義し,量産性を見据え機能配分しスピーカーユニット,レイアウトを一新した。理想の音響性能を追求するため,CAE技術による車室内の音場特性の可視化を行いスピーカーユニットの最適な配置場所を見出した。容量3リットルのバスレフ型ウーファーのカウルサイド配置と,スコーカーとツィーターのドア上部への配置をベースとするシステムで,新型MAZDA3のサウンドは新世代商品群のリードとなる車種にふさわしい音響性能を実現した。本稿では,その内容について紹介する。
著者
志茂 大輔 皆本 洋 福田 大介 岩田 陽明 松本 大典 旗生 篤宏 岡澤 寿史 辻 幸治 森永 真一
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.21-27, 2022 (Released:2022-12-26)
参考文献数
7

カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギー発電への移行期において,将来的な再生可能燃料の選択肢も考慮し,現実的なCO2削減のためには電動化とともに内燃機関の効率改善によるマルチソリューションが有効であると考えられる。その一つの答えとして新世代クリーンディーゼルエンジンSKYACTIV-D 3.3を開発した。排気量を従来の2.2Lから3.3Lに拡大することで高トルク・高出力化は元より,理想を追求したリーン予混合燃焼の拡大の手段としても大排気量化を用いることで,乗用車量産エンジン世界トップの実用域で広い熱効率,及び排気クリーン化を達成した。また低Pmax(最大燃焼圧)対応の構造系を進化させて摩擦抵抗を抑制し,更に直列6気筒による低振動と心地よいエンジン音を創り込んだ。これらの技術によって運転者が愉しく元気になる「走る歓び」,及び抜群の燃費とクリーン排気による「優れた環境性能」の両方をこれまでにない次元にまで高めた。
著者
中田 章博 森川 陽介 岡本 哲
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.19-26, 2020 (Released:2020-12-23)
参考文献数
7

自動車からのCO2排出量削減のために空気抵抗の低減は欠かせない。ただし空気抵抗は車体形状に依存するため,商品開発においてはデザインと空力の両立が命題となる。私たちは,空力性能とデザインを高次元に両立するために,SUVデザインの重要ポイントの一つであり,Cd値への寄与度が大きいタイヤ周りの風流れに注目し,Computational fluid dynamics(CFD)技術と風流れ制御技術開発に取り組んだ。まず,タイヤ形状の再現度とホィール回転手法に着目し,タイヤ周りの風流れの現象を再現できるCFD技術を構築した。そしてCFDを用いて,Cd値に寄与する風流れの運動エネルギー損失の発生要因を分析し,従来技術比でCd値を約3%低減できる新しい風流れ制御技術を確立した。そして新技術をCX-30の商品開発に適用することで,デザインコンセプトとクラストップレベルのCd値の両立を実現できた。
著者
髙谷 洋隆 髙橋 信之 雪田 恭兵 黒木 大史 松並 裕美子
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.83-89, 2019

<p>新型MAZDA3の開発にあたり,ドア開発チームは,「静粛性」をドアシステムの中心性能と位置づけ,開発を行った。狙いとする性能は,以下3つの技術コンセプト「① 面の連続化+通気経路のゼロ化による空力騒音の低減」,「② 質量則使い切り+多重壁化による透過・伝ぱ音の低減」,「③ ガラスの膜振動最小化によるドアガラスからの透過音低減」を適用し,具体化した。空力騒音の低減に対しては,キャビン周りで発生する空気渦を抑制するため,サッシュやピラーガーニッシュの段差や形状を適正化した。更に,通気をなくした新構造のアウターハンドルを採用した。透過・伝ぱ音の低減に対しては,シールの連続性とベルトライン下インナーパネルエリアの穴隙ゼロ化を追求した。インナーパネルエリアに関しては,「直通の穴」と「透過損失の穴」を無くす取り組みを行った結果,透過損失のロスを従来の半分以下とし,総質量を殆ど増加させずに遮音性能を向上させた。車両全体での徹底した穴隙ゼロ化の取り組みにより,背反性能であるドア閉まり性との両立が問題となったが,この問題に対しては,「ドア開閉連動の空調制御」と「閉まり性を向上させたドアチェッカー」の適用により,静粛性を一切犠牲にせず,滑らかで心地のよいドア開閉操作性とを両立させた。</p>
著者
田邉 政治 宮本 幹大 山上 登 山広 昭文 森本 誠司 上村 晴美
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.39-44, 2020 (Released:2020-12-23)
参考文献数
3

マツダの車両開発における信頼性評価では,車体やシャシーに代表されるコンポーネントを使ったリグ試験(熱・振動など過酷な条件を模擬した耐久試験)に加え,実車(フルビークル)耐久信頼性試験が重要な役割を担っている。この耐久信頼性試験は,従来テストドライバーが,耐久車に乗車する形で行われてきた。この業務は,昼夜交代制の勤務でありドライバーの判断ミス防止や労務環境の改善,試験期間の短縮という課題があった。これらの課題に対し有効な打開策となる自動運転装置による悪路耐久試験方法を考案し実用化することができた。本稿では,自動運転装置を適用した事例と今後の展望を紹介する。
著者
山本 修弘 西田 芳伸 伏見 亮 國本 拓也 野村 裕之 中矢 健次
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.219-224, 2019

<p>NAロードスターレストアサービスは,Webで申し込みいただいたお客様のお車を,近くの販売会社様で事前確認し,その後,広島の宇品工場の中にある(株)マツダE&Tの工房で作業する。そのプロセスは受付検査から始まり,分解,塗装,組立,完成検査,TUV(テュフラインランド社様)の認証を取得する。また,車両をレストアするだけでなく,お客様のクルマの分解前後の検査記録,記録写真,お客様のロードスターとの想い出,ロードスター誕生の記録などを収めたフォトブックをお渡しする。レストアサービスと同時に復刻部品の検討も行い,現時点で170部品を復刻した。レストアサービスとパーツ供給サービスを継続することで,愛するロードスターを長く乗り続けてもらえる環境と,古いクルマを大切にする自動車文化に貢献していく。</p>