著者
梶浦 雅己
出版者
愛知学院大学産業研究所
雑誌
地域分析 : 愛知学院大学産業研究所所報 : the journal of the Research Institute of Business (ISSN:02859084)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.25-85, 2008-09

本稿では,AIDCのパイオニアともいえる1次元バーコード(1次元シンボル)の開発から普及の経緯を辿ることにより,AIDC普及のイノベーションを解明する。1次元バーコード普及と発展は,2次元バーコード,RFIDの開発と普及に繋がる重要な位置付けにあり,AIDCを代表する意義を持つものである。また多くのAIDC関連企業は1次元と2次元バーコード,RFID,バイオメトリクスを複合的に組み合わせたビジネスを展開している。そのような背景を踏まえて,1次元バーコードの発明国であり,先進的に普及した米国とそれに追従したわが国の歴史的経緯をみる。バーコードの普及について,それを推進したコンソーシアムであるUPCの活動経緯を中心にその動態を検証して行く。なお本文中の表記「バーコード」とは,特に断りがない限り「1次元バーコード」を意味する。
著者
梶浦 雅己 内田 康郎 安田 賢憲
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年, ICTの標準,特許の関係が深化している。標準はデファクト標準からコンセンサス標準へシフトしている。標準と特許に関する企業のビジネスモデル事例がどのようなものであるかについて,オープン・イノベーションの視点で解明した。事例を検証した結果,オープン・イノベーションによるビジネスモデル構築は,企業内製でなく外部機関レベルで行われ,こうした変化はデファクト標準の衰退,コンセンサス標準の隆盛として出現したことが明らかにされた。
著者
梶浦 雅己
出版者
愛知学院大学
雑誌
地域分析 : 愛知学院大学経営研究所々報 (ISSN:02859084)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.29-56, 2008-03

本研究はイノベーション普及と収益化を取り扱うが,そのためにそれぞれに別個の研究アプローチを用いて複合的な分析を図るものである。このような複合的な分析アプローチを用いる理由は,本文において詳述するようにイノベーション普及と収益化が必ずしも一致しない実態となっており,単一の一般理論に基づく分析アプローチでは事象解析に限界があると思われ,精緻化するためにそれぞれ別個に論じる必要があるからである。同一のケースについて複数アプローチを用いることについての有効性は先行研究をみても明らかである。例えばアリソン(Allison,Graham T.)は「即席に一般化するよりも(それぞれを補完する)部分パラダイムを精密化し,関連する行為の種類を明確化することのほうが,限定的な理論や命題を発展せしめて実り多い」と述べている。また異なったアプローチから得られる部分モデルは相互に排他的ではなく,部分的強調点を明確にして大きなモデルを構築する際の基礎をなすものである。このような前提に立って,イノベーション普及については普及学研究アプローチ,イノベーション収益化については事業システム(ビジネスモデル)アプローチを用いるものである。本論文(その1)ではそれぞれの研究アプローチに関連する先行研究をサーベイし,それを踏まえて本研究のフレームワークを提示する。