著者
橋本 聡子 棚橋 祐輔 山仲 勇二郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

身体運動はヒト生物時計の同調因子かどうか、同調因子とすればその機序は何かを明らかにする目的で、時間隔離実験室において睡眠位相を強制的に8時間前進させる脱同調プロトコールを用いて検討した。健常男性成人を対象とし、自転車エルゴメーターによる身体運動を一日の一定時刻に休憩をはさんで2時間のトライアルを2回負荷して、概日時計(中枢時計)の支配を受ける血中メラトニンリズムや深部体温リズムと、末梢時計の支配を受けていると考えられる睡眠覚醒リズムを以下の条件下で同時測定した。その結果、約10ルックスの低照度下では、睡眠覚醒リズムの再同調は身体運動により促進されたが、血中メラトニンリズムは位相後退し、身体運動には影響されなかった。一方、約5,000ルックスの高照度下では、睡眠覚醒リズムは身体運動の有無にかかわらず再同調した。、また血中メラトニンリズムは位相前進したが完全には再同調せず、身体運動は位相前進に影響しなかった。以上の結果から、身体運動は睡眠覚醒リズムに同調促進効果をもつが、その効果は高照度下では隠蔽(マスキング)されることが示された。