著者
棟方 涼介
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

これまでの研究で得られていたセリ科アシタバ由来のクマリン基質O-プレニル基転移酵素遺伝子(AkPT1)について、詳細な酵素機能解析を行った。その結果、AkPT1は非常に小さいKm値を有すること、基質特異性が高くクマリンの一部の誘導体のみ基質として認識すること、ならびに広いpHで高い活性を保持することなどを明らかとした。また細胞内局在の解析では、AkPT1のN末端領域がプラスチド移行シグナルとして機能することを示した。さらに、昨年度文部科学省支援事業「植物科学グローバルトップ教育推進プログラム」の支援の下で作製したミカン科グレープフルーツ外果皮のRNA-seqデータを基に、新たにO-PT遺伝子CpPTを見出した。酵素機能解析の結果、CpPT1はグレープフルーツを含め柑橘類で最もメジャーなO-プレニル化クマリン誘導体であるベルガモチンの生成を担うO-PTであることが分かった。今後、AkPT1とCpPTの結果を取りまとめて論文を執筆・投稿する。上記と並行して、植物の化学防御物質であるアンギュラー型フラノクマリン(FC)の生合成経路の解明についても研究を進めた。セリ科パースニップより得られていたアンギュラー型FC生合成の初発酵素を担うクマリン基質C-PT遺伝子(PsPT)について、詳細な酵素機能解析、発現誘導の解析、系統解析等を行い、一連の研究成果を論文にまとめた。そのほか、クワ科イチジクからもFC生合成の初発反応を担うクマリン基質C-PT遺伝子(FcPT)を新たに取得した。興味深いことに、PsPTとFcPTは同様の酵素機能を有するにもかかわらずアミノ酸配列の相同性が低く、系統解析により、互いに期限が異なる酵素であることが示唆された。今後、FcPTについても一連の結果を取りまとめて論文を執筆・投稿する。