著者
森 周子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.17-27, 2015-01-25

本稿では,ドイツで2005年に創設された「求職者基礎保障制度」の対象者(稼得能力を有する困窮者)への就労支援の一種である「1ユーロジョブ」について考察した。就労困難な長期失業者を対象とした,追加的かつ公共的な低時給の労働である1ユーロジョブは,通常の労働への就労促進を目的とするが,実際には通常の労働への橋渡し効果が弱く,1ユーロジョブに従事さえすれば求職者基礎保障制度において所得保障が行われるという,ベーシック・インカムの一種である「参加所得」的な要素が見られる。そして,批判が高まるなかで1ユーロジョブは後置的な存在とされ,従事期間にも制限が設けられ,他方でワークフェア的な「市民労働」という新たな取組が緒についている。さらに,1ユーロジョブが,日本で2015年に導入予定の「中間的就労」に与える示唆についても検討し,労働者保護上の措置や所得保障の併用の必要性などを指摘した。