- 著者
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森 善宣
- 出版者
- 佐賀大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
米国、中国、ロシアで公開された資料を丹念に収集した結果、朝鮮戦争(1950年6月)の開戦に至る経緯と開戦後の韓国と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)での政治・経済・社会的な変化を把握する上で、大別して5点に要約できる研究成果を挙げることができた。1.朝鮮の解放(45年8月)から南北分断体制の樹立(48年8〜9月)を経て朝鮮戦争に至る経緯を米ソ両国の朝鮮政策との関係で再整理する中で、北朝鮮による開戦の試図は当時の首相だった金日成が朝鮮共産主義運動の主導権を喪失したのを挽回しようとするところにあった点を明らかにできた。2.朝鮮戦争の開戦経緯と開戦後に起きた金日成による朝鮮労働党内の粛清とを連続的かつ論理整合的に説明できる北朝鮮内の内部矛盾の展開という仮説が正しいことを確認できた。朝鮮統一の戦略と朝鮮労働党内の権力闘争が結び付いた金日成と副首相兼外相の朴憲永との暗闘が矛盾の根源だった。3.朝鮮戦争の渦中から「対立の相互依存」構造と研究代表者が呼ぶ朝鮮分断の状態がどのように形成されたのかを実証的に明らかにできた。同族殺し合う戦争を経る中で南北朝鮮の国内に冷戦の論理を取り入れ、国内の政敵を軍事境界線の向こうの敵と同一視することで権力維持を図るようになった。4.これらの研究成果を得るために行った資料調査の中で、米国ならびに中国から公開されている資料をほぼ漏らすことなく収集でき、またロシア資料の所在と公開状況を把握できた。米国立記録保管所(National Archives II in College Park City)、北京の中国共産党直属の梢案館、モスクワに散在する記録保管所である。5.中国に亡命中の元文化宣伝副相だった金鋼氏など北朝鮮の比較的に高位の人物にインタヴューすると共に、彼らの所持する希少な資料を入手する約束を取り付けた。同時に世界各国にいる朝鮮戦争研究者との接触を通じて、今後の情報収集に道筋をつけることにも成功した。