著者
森 祐一
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1.遺伝性TBG増多症の7家系(日本人3家系、白人4家系)と、男児のみにTBG増多症を認めた日本人1家系において、TBG遺伝子量をDuplex PCR・HPLC法により定量した。TBG増多を示した患者全てに、TBG遺伝子の増幅を認めた。3倍増幅を5家系に、2倍増幅をde novoの症例を含め3家系に認めた。患者の血中TBG値は遺伝子量に対応していた。解析した8家系全てに遺伝子増幅を認めたことから、これが家族性TBG増多症の主要な機序であることが判明した。2.染色体のFISHを日本人4家系と白人1家系で行い、それぞれ1家系でDuplex PCR・HPLC法と合致するTBG遺伝子の3倍増幅が確認された。残りの3家系で確認できなかったが、これらにおいて増幅単位が小さいためと考えられた。3.家族性TBG増多症の日本人4家系で、12種類の制限酵素を用いてサザンブロット解析を行った。全てでRFLPを認めず、制限酵素によるDNA断片がカバーする52Kbp内に増幅の段端点の存在しないことが示された。4.日本人のTBG完全欠損症(CD)あるいは減少症(PD)を呈する50家系で、Allele Specific Amplification法による遺伝子スクリーニングを施行した。44家系がCDJの変異(コドン352の1塩基欠失)、残りの6家系がPDJ(コドン363の1塩基置換)であり、両遺伝子変異が日本人の祖先に生じ広く浸透したものと考えられた。5.CDJ10家系、PDJI家系で、X染色体の不活化パターンを解析し、CDJ、PDJのヘテロ女性各1名が選択的不活化を呈していた。両患者では、正常のTBG遺伝子が不活化されCDJ、PDJのみ発現したため、男性患者と同じTBG値を示たものと解釈された。