著者
森 陽太
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

バテライト形炭酸カルシウムはその熱力学的不安定性から自然界にはほとんど存在しない。しかしながら100nm程度の一次粒子が凝集して二次粒子を形成していることから多孔質体であることが期待されている。材料利用を視野に入れた場合、生成メカニズムや粒子径の制御などその基礎的物性を知ることが重要になる。昨年度はこれらの基礎的物性について引き続き検討を行った。天然セルロースに対しTEMPO触媒酸化を適用することでセルロースミクロフィブリル表面にカルボキシル基を導入することができる。この試料に対し軽微な機械処理することで出発物質に応じた径を有するセルロースナノファイバーゲルが得られる。このセルロースナノファイバと形炭酸カルシウムを複合化についても研究を行った。複合化処理としては未乾燥のナノファイバーフィルムに塩化カルシウム水溶液と炭酸カリウム水溶液を交互に通過させることにより試料の作製を行っている。この試料ではフィルム表面での若干の炭酸カルシウム生成が確認されている。また、セルロースナノファイバーゲル中で緩やかに炭酸カルシウムを結晶成長させた場合、他の高分子ゲル中では見られない200μm程度の特異的な形状を有する結晶が得られた。この花弁状の結晶はセルロースナノファイバの径には依存せず、セルロースナノファイバのような高結晶性で商アスペクト比を有するゲル中で物理的拘束を受けることで特異的に生成すると考えられる。これらの詳細な生成メカニズムについては現在検討中である。