著者
森下 正之
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.59, pp.95-98, 2009-06-26

文系の大学生・大学院生・社会人が経済や経営系の論文や書籍を読解力低下が観察される。原因の一つが小学校の作文の基礎的訓練に問題と推察。論文・作文の構成法として漢文由来の「起承転結」の基礎教育を受けた大学生・院生・社会人の「コピペ(データーや文章の切り張り)」横行で熟考忘れた社会が懸念される。明治維新に日本語の近代化に関係か。今注目の水村美苗氏の「現地語の日本語が英語という普遍語を介して国語に確立された」旨の理論を援用し、原因の説明が可能。日本語近代化の過程で英語の作文(composition)の主要な考え方が採りいれられず、経済・経営系論文を英語に翻訳の場合ハンディとなり、経済学・経営学での国際的業績評価が低くいのも原因と推察。解決法の一つとして中間言語的国語に基づき、論理的な国語で書くための読解力(reading for writing)の具体的改善指導法を提示。文系の大学生・院生・社会人に対して、一流の専門家が執筆した、最新の経済・経営系の新聞・雑誌等小論文を教材に使い、小テストと宿題の連動課題を与える。結果的に、短期のメモリーを長期メモリーに変換のプロセスで受講者が自発的に時間を掛け、熱中し、熟考する。特に、小論文の対象となる話題・テーマはリアルタイムで発生のインパクトのある事象を扱い、唯一絶対の正解は存在しない。社会的、経済的テーマの論文から書かれていない(隠された)問題を特定する演習は、複眼的思考を鍛えることを意図する。但し、課題は教員・講師の時間的負担が大きいが、実学である経済・経営系の小論文の書くために開発された読解力の向上方法の有用性をここに提示する。