著者
森作 俊紀 北澤 卓也 鈴木 光 由井 宏治
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.554-561, 2014 (Released:2014-11-25)

-0.01°Cから-1.0°Cの過冷却温度範囲において,形成される氷結晶形態の不凍糖タンパク質(AFGP)濃度に対する依存性を0 mg/mLから1.0 mg/mLの範囲で調べた.-0.01°CではAFGP濃度の増加につれて過去に報告された円盤→六角板→角柱への形態変化が再現性よく観測された.次に-0.3°Cから-0.5°Cで調べた所,1.0 mg/mLで先端がファセットな多数の板状結晶が放射状に成長する新しい結晶形態を見いだした.この氷形態に着目して濃度を固定しさらに温度を下げた所,-1.0°Cでシダ状星型樹状結晶になる事が観測された.シダ状星型樹状結晶は自然界では雪の結晶として約-14°Cで形成されるが,AFGP共存下では-1.0°Cの過冷却温度で観測された.比較的高温でもシダ状星型樹状結晶が観測された要因として,プリズム結晶面へのAFGPの吸着による結晶面間の成長速度差が,約-14°Cでたち現れる速度差と同程度まで大きくなった事が考えられる.