著者
森口 明美
出版者
大阪女学院大学・短期大学
雑誌
大阪女学院大学紀要 (ISSN:18800084)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-13, 2006

アラブ文学においては一般に韻文が最高の文学的表現と考えられてきた。中でもジャーヒリーヤ時代(イスラム勃興以前の無明時代)のムアッラカート(muallaqat)と呼ばれる7つあるいは10の長詩はすべてのアラブ詩の中で最高傑作とされている。ジャーヒリーヤ時代の韻文はアラブ人の生活や精神を反映するだけでなく、コーランのアラビア語とともに古典アラビア語の成立に多大な影響を与えたとして言語学的にも重要である。その一方で、伝承過程における様々な問題点も指摘されている。本論文では、ジャーヒリーヤ時代の代表的詩人、イムルウルカイス(lmrual-Qays, d.c.550)のムアッラカ(muallaqa,ムアッラカートの単数形)のテキストの比較分析を行った。その結果、対象とした5つのテキストはすべて異なっていたが、その違いは限定的かつ規則的であった。