著者
森實 芳仁 芝崎 太 黒井 克昌
出版者
財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

昨年度より引き続き、新規診断法確立のためのMUSTag法の改良及び民間企業との共同研究による新たな診断機器・計測法の開発を継続しつつ、実際の臨床検体を用いて各種疾患に関与するバイオマーカーを標的としたより大規模な臨床研究を開始した。1.MUSTagアッセイ用検出機器の共同開発平成21年度に開発に成功した超高速PCR装置の臨床応用により、新型インフルエンザ等の感染症における遺伝子診断において、迅速(30分以内)に診断結果を得る事が可能となった。一方でMUSTagアッセイ用の検出機器としては測定可能な検体数の問題から(最大12ウェル)未だ実用可能な段階には至っていないため、今後は検体処理能力向上のための装置の改良が急務である。また昨年度開発を行ったMUSTag法の標識技術を蛍光・発光イムノクロマト検出法に応用したIMPACTag法と、民間企業と連携して開発した高感度蛍光検出機器を組み合わせる事で、各種感染症の簡便・迅速かつ超高感度なイムノクロマト検出系の開発に成功し、現在臨床診断薬としての実用化のための検証を進めている。2.アッセイ法の改良磁気ビーズを抗体の固相担体に用いるMUSTagアッセイ系の開発により最大10倍程度の高感度化が得られた他、血清等の臨床サンプルを用いた実験において適切な前処理方法との組み合わせにより、非特異的反応をほぼゼロに低減する事に成功した。現在は上記の改良を行ったMUSTagアッセイ系を、各種臨床サンプル中のバイオマーカーの測定に応用している。3.MUSTag法を用いた臨床サンプル中の各種疾患関連バイオマーカーの測定MUSTag法を用いた臨床試験により、膀胱がんや運動機能関連疾患等の診断に有用なバイオマーカーの選別・検定を開始しており、その結果いくつかの因子において患者-健常者間で有意な差が見られる事が明らかになっている。