著者
内野 博之 牛島 一男 平林 剛 石井 脩夫 芝崎 太 黒田 泰弘
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.527-550, 2007-10-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
63

集中治療における脳保護の成否は, (1) いかに早期に脳への血流を再開させ, エネルギー代謝を改善することができるか (脳機能回復を念頭に置いた脳蘇生法) と, (2) 血流再開後にいかに脳を保護できるか (脳神経障害から脳を保護する治療法の適用) の2点が大きな柱となるものと思われる。すなわち, 心停止後の頭蓋外臓器の機能を脳に有利になるような方法で管理し, かつ頭蓋内の恒常性を維持することをその意図とすることをその主目的としている。神経集中治療における救命救急処置法の改善および脳保護法の進歩や脳指向型集中管理法が併用され, これまでは回復が難しいと思われてきた神経機能回復に光明を見い出すことができるようになったが, 人の脳神経細胞障害のメカニズムは複雑かつ多要素で, 神経機能回復を目指した治療を開始するまでの時間が極めて短く, 虚血性脳神経細胞障害を完全に抑制できる状況とは言い難い。本稿では, 虚血性神経細胞障害における細胞内カルシウム動態とフリーラジカルの関与を紹介し, 細胞死に深く関わるミトコンドリア機能不全とカルシニューリン/イムノフィリン情報伝達系の重要性を概説する。
著者
内野 博之 諸田 沙織 Chen Li 高橋 俊明 工藤 佳久 池田 幸穂 石井 脩夫 芝崎 太
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-11, 2006-03-20 (Released:2010-06-08)
参考文献数
25

脳は非常に繊細な臓器であり, 短時間の虚血によって容易に障害を受ける。麻酔科医は, 通常業務の中で脳障害を引き起こす病態に遭遇することが少なく無い。脳をさまざまな侵襲から守るためには, 脳の生理的な特徴と脳障害を引き起こす病態の把握が重要となる。脳が虚血となるときの脳血流, 動脈血酸素分圧, 脳潅流圧はどのくらいなのか。脳を障害する病態と脳障害の基礎的なメカニズムおよび二次的に派生する障害の重要性とは何かについて概略を述べた。
著者
梶原 直樹 芝崎 太
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.141, no.4, pp.220-221, 2013 (Released:2013-04-10)
参考文献数
15
著者
森實 芳仁 芝崎 太 黒井 克昌
出版者
財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

昨年度より引き続き、新規診断法確立のためのMUSTag法の改良及び民間企業との共同研究による新たな診断機器・計測法の開発を継続しつつ、実際の臨床検体を用いて各種疾患に関与するバイオマーカーを標的としたより大規模な臨床研究を開始した。1.MUSTagアッセイ用検出機器の共同開発平成21年度に開発に成功した超高速PCR装置の臨床応用により、新型インフルエンザ等の感染症における遺伝子診断において、迅速(30分以内)に診断結果を得る事が可能となった。一方でMUSTagアッセイ用の検出機器としては測定可能な検体数の問題から(最大12ウェル)未だ実用可能な段階には至っていないため、今後は検体処理能力向上のための装置の改良が急務である。また昨年度開発を行ったMUSTag法の標識技術を蛍光・発光イムノクロマト検出法に応用したIMPACTag法と、民間企業と連携して開発した高感度蛍光検出機器を組み合わせる事で、各種感染症の簡便・迅速かつ超高感度なイムノクロマト検出系の開発に成功し、現在臨床診断薬としての実用化のための検証を進めている。2.アッセイ法の改良磁気ビーズを抗体の固相担体に用いるMUSTagアッセイ系の開発により最大10倍程度の高感度化が得られた他、血清等の臨床サンプルを用いた実験において適切な前処理方法との組み合わせにより、非特異的反応をほぼゼロに低減する事に成功した。現在は上記の改良を行ったMUSTagアッセイ系を、各種臨床サンプル中のバイオマーカーの測定に応用している。3.MUSTag法を用いた臨床サンプル中の各種疾患関連バイオマーカーの測定MUSTag法を用いた臨床試験により、膀胱がんや運動機能関連疾患等の診断に有用なバイオマーカーの選別・検定を開始しており、その結果いくつかの因子において患者-健常者間で有意な差が見られる事が明らかになっている。
著者
戸田 年総 中村 愛 芝崎 太
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

二次元電気泳動と質量分析に基づくプロテオーム解析技術を用いて、髄液中の酸化修飾蛋白質の網羅的探索を行った。その結果、アルツハイマー病の患者の髄液中では、それ自体がアミロイド病の原因となる一方でβアミロイドとの結合性を有し、βアミロイドのオリゴマー形成を阻害することによりアルツハイマー病の発症に対して抑制的に働いている可能性が示唆されているトランスサイレチンが特に強く酸化を受けていることがわかった。