著者
山田 将弘 森寺 邦晃 森 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0350, 2017 (Released:2017-04-24)

【目的】拡散圧力波は2015年より保険適応で使用可能となり,当院では難治性の足底腱膜炎に対して拡散圧力波を取り入れた治療を行っている。足底腱膜炎に対しては体外衝撃波(集中衝撃波)の研究報告が世界で数例報告されている。しかし,本邦において足底腱膜炎への拡散圧力波による治療介入の報告は,我々が調査した限りでは見当たらない。そこで拡散圧力波を使用し,一定の結果と傾向が得られたため,その治療結果を文献的考察を含めここに報告する。【方法】足底腱膜炎と診断され拡散圧力波による介入を行った患者6名(男性1名72歳,女性7名67.80±11.71歳)7脚を対象とした。初診時の罹患期間は半年から一年半であった。調査期間はH28.5.16~H28.9.30とした。治療内容は,患部への拡散圧力波照射と足底筋に対するストレッチを行った。治療機器はGymna社製,Physio-ShockMasterを使用し,拡散圧力波を圧痛部位に疼痛閾値程度の刺激強度(1.5~4.0bar)で照射し,周波数は8~16Hz,shock数は2000shocks,で統一した。治療頻度はGerdesmeyerの先行研究に習い,週に1回(最小6日・最大14日)とした。痛みの程度をVisual analog scale(以下:VAS)を用いて評価した。初回,1週間ごとに計測し痛みの推移をみた。また拡散圧力波照射前後でVASを計測し,照射前後での痛みの変化を最大8週間計9回までみた。さらに患者の主観を内政調査で聴取した。拡散圧力波照射前後のVASに対し対応のあるt検定を使用し統計学的処理を行った。統計学的有意水準は5%(片側2.5%)未満とした。統計ソフトはStat flex Ver6.0を使用した。【結果】初回のVAS平均66.14±12.67mmであった。6名7脚全ての患者で1週ごとにVASは漸減傾向を示し,4名5脚で4週目でのVASが10mm以下となった。また残りの2名2脚においても8週目でVASは10mm以下となった。拡散圧力波の照射前後でのVASは有意に低下した(p<0.01)。口頭による内政調査では,4名において「朝の一歩目以外は痛くない」との回答が得られた。【結論】1週ごとにVAS値は漸減傾向を示し,4週目でVASが2名を除いた4名5脚においてほぼ0mmに近い値となり,良好な治療効果が得られた。残りの2名2脚に関しても8週目でVASが10mmを切る値となっていた。拡散圧力波の照射前後でVASは有意に低下しており,即時の除痛効果が期待できることが示唆された。拡散圧力波はクラスIIの機器であるため,クラスIIIの機器である体外衝撃波と比べて安全に使用しやすいと思われる。我々の拡散圧力波を用いた方法は拡散衝撃波を用いた諸家の報告と同等の治療効果が得られており,足底腱膜炎に対する拡散圧力波照射は有用な治療法であることが示唆された。