著者
岡村 智教 上島 弘嗣 門脇 崇 森山 ゆり
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

勤務者男性約250人の上下肢血圧比(ABI)、上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)を測定した。同時に血中の直接的・間接的抗酸化ビタミンであるα-トコフェロール、葉酸、ビタミンB12、炎症反応指標であるCRP(C反応性蛋白)、喫煙や飲酒などの生活習慣を測定し、ABI、baPWVとの関連を検討した。各血液検査指標の平均値は、α-トコフェロール;38.9μmol/、葉酸;15.4nmol/L、ビタミンB12;295pmol/L、CRP(geometric mean);0.47mg/Lであった。下肢の動脈閉塞症が示唆されるABI0.9未満の者は3名に過ぎず統計学的な解析は不可能であった。baPWVは年齢によって大きな差があるため、対象者のうち50歳代で循環器疾患の既往歴がなく、ABIが正常かつCRPの上昇を伴う急性・慢性炎症を持つ者を除外した178名を解析対象とした。baPWVの平均値は1468cm/sec(標準偏差;221)であり、単変量解析では、年齢、CRP、収縮期と拡張期の血圧値、心拍数、空腹時血糖値がPWVと有意な正の関連を示し、逆に血清脂質、BMI、葉酸、ビタミンB12、α-トコフェロール、喫煙、飲酒は関連を示さなかった。線形重回帰分析で危険因子相互の関連を調整すると、年齢、血圧値(収縮期または拡張期)、心拍数、CRPのみがbaPWVと有意な正の関連を示した。共分散分析で他の危険因子を調整した場合、CRP四分位別のbaPWVは、1431、1436、1507、1508cm/secであった。baPWVの増加は大動脈の早期の動脈硬化性病変の存在を示唆していると考えられるため、CRPの測定は動脈硬化の早期発見に有用と考えられた。一方、抗酸化ビタミンはbaPWVとは関連せず、より進行した動脈硬化プラークの形成抑制等に関連している可能性がある。