著者
石黒 茂 西尾 晃 宮尾 陟 森川 嘉夫 竹野 一 柳谷 岩雄
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.141-146, 1987 (Released:2007-02-23)
参考文献数
24
被引用文献数
1

マグネシウム(Mg)欠乏飼料で幼若ラットを飼育すると脾臓のヒスタミン含量が著明に増加する.この増加したヒスタミンがどのような細胞に含まれているのかを明らかにする目的で組織学的観察を行った.Mg欠乏飼料(0.001%Mg)で幼若ラット(平均体重50g)を飼育すると,8日目には脾臓の腫大がみられ,対照ラットの約2倍の重量を示し,ヒスタミン含量は約30倍に増加した.エポキシ樹脂包埋の厚切標本の光学顕微鏡観察により多数の顆粒細胞が観察された.電子顕微鏡観察では,核の形態と顆粒の電子密度から好中球および好酸球が鑑別されるが,この二種類の細胞以外に,数個から20数個の顆粒を含有する細胞が観察された.この細胞の顆粒の大きさは肥満細胞の約2倍(1μmを越える)に達するものも認められた.遊離脾臓細胞をギムザ染色すると,Mg欠乏ラットでは,対照ラットでは観察されなかった好塩基性骨髄球および好塩基球の出現が観察された.これらの細胞内にはo-phthalaldehydeと反応して黄色の螢光を示す顆粒が散在して認められた.一方,腹腔肥満細胞を同様にo-phthalaldehydeと反応させると黄色の螢光を示す顆粒は密に存在しており,好塩基性細胞のものとは異なっていた.以上の成績より,Mg欠乏ラット(Mg欠乏8日目)脾臓のヒスタミン含量増加には,好塩基球の増加が関与していることが示唆された.